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「年金マガジン-ネット探検隊が行く」vol.6 04年改革の「誤算」

松浦新

松浦新 朝日新聞経済部記者

 04年改革で心配された「50%割れ」ところが現実は、現役世代に比べると年金給付はよくなっている。04年改革の誤算は何だったのか。ネット探検隊は、さらに「年金ジャングル」の奥地に入っていく。

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「年金マガジンネット探検隊が行く」vol.1 改革は一体どこへ

「年金マガジン-ネット探検隊が行く」vol.2年金の仕組みから理解しよう

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 【ネット探検隊】年金の現状や改革の方向性をネット上のデータを探索しながら明らかにしていく。隊長、隊員は以下の3名。

 隊長:香川年男 1973年生まれの37歳。バブル崩壊後、阪神大震災の年に社会に出た。

 隊員:本田景子 1985年生まれの25歳。リーマン・ショック前の平成ミニバブル期の採用。

 隊員:岡崎金人 1947年生まれの63歳。団塊世代の先頭集団で、定年後も嘱託で働く。

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 本田 前回は、働く世代の給料が減って、受給者の年金の価値が比較的高くなっているという話をしましたね。こんなことをしていたら、若い人たちは働く意欲を失います。現に、ずっと厚生年金に入っていた父親がいて、その子供は請負の「非正規労働」で国民年金なんてことも珍しくありません。

 岡崎 実はねえ、うちがそうなんだ。息子はシステム会社の技術者なんだけど、08年のリーマン・ショックで仕事が激減したために、請負契約に切り替えられてしまった。基本は自宅待機で、仕事がある時に受注先の会社に出るだけになっている。会社の福利厚生は使えないし、収入も不定期なので、国民年金の保険料もきちんと払っていないみたいなんだ。

 香川 厚生年金に入っている人の給料も減っています。保険料は給料にかかるので、集まる保険料も減っていることになりますね。厚生労働省が発表している厚生年金の財政状況の17ページにある「財政再計算における将来見通しとの比較」を見てください。収入の保険料の下のほうの「差の主な要因」に、「賃金上昇率の低下」とあって、「平成15年度以降の累積が見通しより9%程度低下」と書いてあります。これは、04年改革の時に、08年度に見込んでいたより、いまの賃金が9%分低いということを意味します。

 本田 何ですか、それ。私たちの給料が見込みよりも9%分も下回っているって、いったいどのくらい伸びると見込んでいたんですか?

 香川 それは、最後の24ページの一番下を見てほしい。「平成16年財政再計算結果」の一覧表の右のほうに、「賃金上昇率」があるね。これによると、08年度は2.7%を見込んでいた。05年度は別にして、いずれも2%を超える上昇を見込んでいる。

 本田 実際には、私たちの給料は下がることが多かったはずよ。これじゃあ、9%分下回るわけよね。04年の時点で、こんなに高い賃金上昇率が見込めたなんて、よほど脳天気な人たちか、経済オンチよね。どうしてこんな見込みになったのかしら。

 香川 それには「マクロ経済スライド」を理解する必要がある。このパンフレットを見てわかるかな。

 岡崎 そもそも、「スライド」というのがわからないなあ。

 香川 年金額の調整とでもいえばいいでしょうか。04年改革までは、「物価スライド」と「賃金スライド」がありました。物価のほうは、年金をもらい始めて、物価が上がった時に年金だけで生活していると、それまで買えたものが買えなくなってしまうから、年金額も上げましょうね、というものですね。

 岡崎 いまはデフレだから年金が下がっているけどな。かつて、国民年金は満額で6万7千円と言われたけれど、いまや6万6千円だからなあ。また、4月から年金が下がるんだから、我々もよく我慢していると思うよ。

 香川 そこは議論があるところなので、後回しにしましょう。もう1つの賃金スライドは、

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