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節電ブームにあえて異議を唱える

森永卓郎

森永卓郎 経済アナリスト、獨協大学経済学部教授

 東関東大震災で被災した東京電力や東北電力管内には政府が一律15%の節電要請をしているが、被災のなかった関西電力までが、一律15%の節電要請を表明した。こうした節電要請に関しては、工場がシフトを切り替え、電車が間引き運転をするなど産業界は総じて節電に協力的だし、節電グッズがヒット商品になるなど、国民も懸命に節電に励んでいる。

 しかし、私は今回の節電ブームには、どうしても違和感を覚えてしまう。節電への非協力者をバッシングする全体主義的な空気が世の中にあふれているからだ。節電をしない人は「非国民」だと言わんばかりの空気は、現代の灯火管制のようだ。

 例えば、住宅街では、日中なかなかエアコンをつけられないという。室外機が回っていると、近所から何を言われるか分からないからだ。また、商店の多くが看板の照明を減らしている。夜間の電力は余っているのに、看板に点灯すると、店に苦情がくるかららしい。近所のコンビニには、「近隣からのご要望もあり、防犯のために看板を点灯させていますが、当店では蛍光灯をLEDに取り換えたため十分な節電をしております」という貼り紙が掲出されていた。

 日本は自由主義経済なのだから、法令を遵守していれば、ビジネスのスタイルは自由に決められるはずだ。それなのに、節電という国策に従わない者を、社会が容赦なく攻撃する姿勢は、ファシズムに近い。

 もちろん、私は節電そのものに反対しているわけではない。私自身も、家や事務所の照明器具を、LED電球やLEDのシーリングライトに取り替えたし、人のいない部屋の電気をこまめに切るといった努力はしている。しかし、

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