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北大HOPSマガジン 【北海道から何を発信するか】 経済・金融・財政の構造変化と針の穴

宮脇淳(行政学、公共政策学)

 2000年代に入り、北海道と日本全体の経済動向の乖離が大きくなっている。以前は、日本経済が回復するとそれに遅れて北海道経済が回復、日本経済が減速するに先立って北海道経済が減速するというタイムラグを抱えながらも、両者の連動性が強かった。しかし、1997年のアジア通貨危機以降、その関係は薄れ日本経済全体は回復し、2008年のリーマンショックを受けるまで、ほぼ潜在成長率に匹敵する実質成長率2%前後を実現している。

 これに対して、北海道経済は、波はあるものの一貫して右肩下がりのマイナス成長の傾向が続いている。こうした乖離発生の理由の第1は、日本経済がグローバル化の中で新興国を中心に輸出主導型での成長を2000年代に入り実現したのに対し、北海道経済ではそもそも輸出依存度が低く、新たな景気回復の構図の恩恵を十分に受けることができなかった点が挙げられる。

●北海道経済は、日本経済の先行指標

 第2の理由は、デフレ圧力の増大である。2000年代に入り産出額ベースでの北海道経済に占める産業別ウェートを見ると、農業は変化なく、建設業、小売・卸売業、製造業のウェートが大きく低下し、観光等のサービス業、公的サービスが大きくウェートを高めている。そして、このウェートを高めた領域のほとんどでは、グローバル化と少子高齢化の中でデフレ圧力を強く受ける結果となった。戦後の北海道経済の成長を支えてきた分野が衰退し、それを埋めるべく期待された農業、そして拡大してきたサービス業領域の高付加価値化が大きく遅れた結果、地域経済の成長核が萎み落ち込みを激しくしている。

 しかし、北海道経済は、日本経済の先行指標であり、同様の構造的問題が数年のタイムラグをおいて日本経済全体の問題として顕在化する可能性があることに留意すべきである。建設業、流通業、製造業のグローバル化と国内の空洞化、サービス業の低付加価値状況等、同様の問題を日本経済全体が潜在的に抱えている。

 先行指標としての北海道の問題点は、実体経済面に限られない。金融面にも存在する。それは、

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