青山浩子
2011年08月15日
福島県の農業経営者を訪ね、彼らがいかに厳しい経営状況に置かれているかを聞いた。
カイワレダイコン、ミョウガなどを生産している(有)降矢農園(郡山市)は、東日本大震災以来、売上げが9割減った。それでも買ってくれる1割の顧客のために生産を続けている。
生産量が1割になったからといってコストが1割になるわけではなく完全に赤字だという。原発から30キロメートル圏外にある同社には、現時点(8月7日現在)では賠償金がまったく出ておらず、銀行からの借入で資材費やパートの人件費を払っている。
「思い切り体を使い、疲れ果てるまで仕事をして熟睡したい」――。降矢セツ子さんの一言は福島県の農業者の思いを代弁している。
同じく郡山市でナメコや枝豆を生産する(有)鈴木農園は、懇意にしているスーパーから取引中断を告げられた。
同社は震災以来、土壌や空気中の放射線量を少しでも減らすために栽培段階で考えられる限りの策をとった。出荷時には、自主的に調べた放射線量のデータ(規制値以下)を添付した。ところが店頭に並ぶ枝豆を見た顧客から「なぜこんな時期に福島県産のものを置くのか」とクレームがつき、スーパーから「申し訳ないが」と通達があった。
原発による被害の賠償請求をするには売れようと売れまいと生産を続けなければならない。本来このぐらいの価格で売れるはずがこれだけ下がったという証拠がなければ補償されないためだ。行き先のない作物を作ることがどれほど虚しいことだろうか。
福島県産の農産物の扱い方は、流通業者によって大きく分かれている。
取材した農業者の農産物にNOを突きつけた小売業者の中には、
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