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日本は善行の報いを得るべき―2012年の経済展望

原田泰 原田泰(早稲田大学教授)

 未来を見ることは難しい。昨年は、東日本大震災はもちろん、原発事故も予測できなかった。タイの洪水も分からなかった。ヨーロッパの混乱がここまで広がるとは思わなかった。アメリカについては徐々に回復するだろうと述べていた。日本は世界に合わせて大胆な金融緩和をしないと円高になり、景気を悪化させると指摘していた(これについては、原田泰「日本は第2次大戦前のフランスになってはならない」〈http://www.dir.co.jp/souken/research/report/harada/10123001harada.html〉を参照されたい)。後の2つは予測通りとなった。

変化を行えるシステムは強い

リーマン・ショック直後に書いた本『世界経済同時危機』(日本経済新聞社、2009年2月刊)では、「アメリカは大きな過ちをしたが、その理由を明らかにしようとし、また責任者を交代させている。ヨーロッパでは、エリートの交代はたいして起こっていない。チェンジを行えるアメリカのシステムは、依然として世界をリードし続けるだろう」と書いた。大局的に見れば、この言葉は正しかったと思う。

 ここで変化とせずに、チェンジと書いたのはオバマ大統領の人気がまだ高かったからだが、景気回復が遅れ、失業率がなかなか下がらないことによって、1期だけの大統領になるのではないかと言われている。確かに、今回の景気回復は、戦後の回復の中で、1期だけで終ったカーター政権末期の景気回復の次に遅い。しかし、共和党が、保守派を共感させ、国民にも魅力的な大統領候補を探しあぐねていること、実際に大統領選挙のある2012年11月にかけて経済が回復し、失業率が低下していくことで、オバマ大統領の2期目のチャンスもまだあるだろう。

 イタリアは90年代の中頃からリーマン・ショックの前まで財政再建に成功していた。政府債務の対GDP比は低下していたのである。リーマン・ショック後は拡大してしまったが、どの国もそうなのだから仕方がない。ところが、財政状況が疑われて、イタリア国債の金利もが急騰した。金利が7%ということになると、いくら緊縮しても金利を払うために赤字が拡大するという状況になる。ドイツ、フランスとヨーロッパ中央銀行が助けなければ、危機は収束しないだろう。

 中国は、

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