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東大秋入学で始まるか、大学と就活の「分化」

常見陽平 千葉商科大学国際教養部准教授 いしかわUIターン応援団長  社会格闘家

 昨年の半ばから話題になっていた東大の秋入学がいよいよ具体的に提案される模様だ。メディアはこの話題で持ちきりである。京大や阪大を始め、各大学でも検討する動きが広がっている。政治家や経団連からも概ね賛成の声が多数だと報じられている。

 私も今回の改革には元々賛成で、期待をしていた。詳しくは昨年、WEBRONZAに寄稿した以下の2本の原稿を参照して頂きたい。本論では、賛成ムードの空気を読まずに、思うところを述べさせていただく。

「東大秋入学」は日本を変えるか(上) 「タフな東大生」育成への期待

「東大秋入学」は日本を変えるか(下) 進む大学の機能分化と新卒一括採用の多様化

女子学生頼みから留学生頼みへ

 まず、大学の秋入学について、大学側の本音を探ってみたい。秋入学の目的の一つは留学生を受け入れやすいことだと言われている。うがった見方をすれば、秋入学には、留学生を獲得して大学の経営をなんとか安定させたい、学生の質を高めたいという意図が見え隠れする。その際の決まり文句が「グローバル化」である。

 この言葉は、『水戸黄門』の印籠のように便利な言葉だ。最近の日本では曖昧なこの言葉を連呼するだけで庶民はもちろん、一部の知識人もひれ伏す。『水戸黄門』も終了したのだから、この思考停止もそろそろやめた方がいい。

 日本ではこれまで、少子化傾向がほぼ止まらないのに、大学の数は劇的に増えてきた。男女とも大学進学率が上がったが、とりわけかつては短大や専門学校に通っていた女子学生を取り込むことで生きながらえてきた大学も少なくない。今度はその狙いを留学生にシフトしたという見方もできる。

 政府としても留学生の増加は、将来の労働力の確保という観点からも重要な施策であり、これに関する補助金や優遇措置は今後も講じられていくだろう。

 もっとも、海外の優秀な学生にとって日本が留学先として魅力的かどうかは別問題である。外国人留学生比率が約半分である立命館アジア太平洋大学(APU)に昨年1月に取材をしたときのことだ。「APUの課題とは何か」と言う質問に対して、返ってきた答えの一つは「外国人留学生にとって、日本の魅力が低下していること」だった。

 留学生の就職斡旋を行なっている企業の経営者に聞いた話だが、中国の学生のうち、最も優秀な層は欧米に留学し、2番目に優秀な層は北京大学や精華大学など国内の上位校に進学する。日本にやってくるのは3番目以下の層だという。

 今回の施策の本音に留学生の獲得がある一方で、日本自体の魅力が落ちていること、別にトップ層を獲得できているわけではないことは覚えておいた方がいい。

大学の「入口」と「中身」の改革を

 最近の大学改革をめぐる議論では、あたかも、秋入学=大学改革であり、すべてを解決するかのような空気になっていることには違和感を覚える。大学が健全で国際的にも通用する競争力を獲得するには、「入口」と「中身」の見直しをしなくてはなるまい。

 あえて暴論を言わせてもらうと、

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