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日本でも製造業の雇用は重要だ

原田泰 原田泰(早稲田大学教授)

 日本はものづくりが大事だとしばしば言われるが、アメリカでも製造業の雇用が重要だという議論が盛んである。オバマ大統領は自動車産業の救済に尽力したし、輸出を通じて(すなわち製造業で)雇用を作ると主張している。これに対して、反論もある。本欄で吉松崇氏が紹介しているように、アメリカでは、製造業を特別扱いする理由はないという議論と製造業の衰退は国力の衰退につながるとする議論との論争がある(吉松崇「雇用を巡る政策論争-製造業は特別なのか?」2012年02月23日)

日本の製造業もやや高い給与を払っている

 日本でも似たような論争がある。ものづくりを通じて雇用を維持するべきと主張する人々と、少子・高齢化に向かう日本では、保育、介護、医療などサービス業の雇用が大事と主張する人々がいる。

 どう考えたら良いだろうか。まず、事実として、製造業の給与はサービス業の給与に比べてやや高い。厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(2009年)によると、平均月間給与と賞与その他特別給与額を合わせた年間の給与額は、一般化学工、旋盤工、金属プレス工、鉄工、仕上工、溶接工、機械組立工、機械検査工、機械修理工、自動車組立工で386万円から487万円である(これらの単純平均は429万円となる)。

 これに対して、保育、介護、医療などサービス業の給与を見ると、医師は1,219万円、看護師は467万円と高いが、介護士は334万円、販売店員(百貨店を除く)は383万円(以上、男性の場合)、保育士は326万円、ホームヘルパーは268万円である(以上、女性の場合のみデータがある)。

 医師の給与はもちろん高く、看護師の給与は製造業の上の方にあるが、介護士以下は製造業の賃金よりも年100万円程度低い。さらに重要なことは、福祉関係の仕事は税金の投入があって初めてこれらの賃金を支払えるということだ。保育、介護、医療で雇用を作るとは、税金を投入して雇用を作るということである。これでは、雇用は増えても財政赤字はますます拡大してしまう。赤字を拡大させないために増税したのでは、増税による景気悪化効果によって、福祉関係の雇用は増えても、全体としての雇用は減ってしまうだろう。

税金に頼らない賃金は貴重

 残念なことに、税金に頼らずそれなりの賃金を払うことのできる製造業の雇用は、減少している。2000年1月に1329万人いた製造業の雇用は2011年12月には1019万にまで減少してしまった(総務省統計局「労働力調査」)。グローバリゼーションによって世界のどの地域でも様々なものを作ることができるようになったからだ。

 しかし、このトレンドは円高によって強まっている面がある。ところが、

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