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1ドル=50円台の現実味は~欧州危機で買われる円

小原篤次 大学教員(国際経済、経済政策、金融)

 フランス大統領選挙、ギリシャ総選挙は、マーケットにとって予想された不確実要素、為替変動リスク・イベントである。現職のサルコジ大統領の敗退、連立協議決裂によるギリシャの再選挙は、予想されたなかでの悪材料と言える。

 日本への影響は様々なルートが考えられるが、足の速さと実体経済への影響を総合的に考えると、為替市場が注視される。

今年もギリシャ国債の債務交換を巡り、ユーロが乱高下してきた。年初来の高値水準は1ユーロ=1.35ドル(2月24日)、そして安値は1.26ドル(1月16日)である。直近は1.28ドルまでユーロ安が進んでいる。5月1日から5月18日までの推移では、ユーロ・ドル相場が4.5%のドル高ユーロ安、ドル・円相場が0.6%のドル安円高である。ユーロに対してはドル高に動いたものの、円高にも作用している。消去法的に円が買われたのだろう。

 ソブリン危機は市場にとっては教科書的考え方の修正を迫られる。国債市場は本来、信用度の高いマーケットである。金融機能の中核をなす長期金利を形成される。企業向け融資、住宅ローンなどのベンチマークになる。資産運用の管理で想定するリスク・フリー金利に使用されてきた。長短金利の差も縮小しており、収益機会も縮小している。

 よって、マーケットの中で為替市場は、投機家(=投資家)にとって、相対的に安心で、かつ短期間の価格変動性が期待できる市場になる。ギリシャ国債のようにソブリンでさえ低格付けとなり、デフォルトリスクを抱えるような極端な市場環境において、

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