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「スペインの若者失業率50%超」にひそむラテン的真相

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

 ギリシャの次と言われるスペインで失業率が異常に高まっている。平均23%、若者(25歳未満)に限れば50.5%で、2人に1人が失業者だ。では、彼らは収入もなくどのように生きているのか。筆者は5月上旬にスペインを訪れた折、この謎を調べてみた。

不況と緊縮財政で生活は苦しくなっている=マドリード市内のスーパー

 まず見えてきたのは親や祖父母と同居して助け合う家族愛の姿だった。

 スペインは高福祉、高負担(消費税率18%)の国である。たとえば小中学校の義務教育費はただ、大学の授業料も年間10万円ほど、医療費はただ、薬代のみ3分の1負担など。失業したら、年金や収入のある家族の下に身を寄せる。食費さえ捻出できれば、住宅費も教育費も医療費もいらないので、子供がいても十分に生きていけるのだ。

 カトリックのスペインには昔の日本のように高齢者を大切にする文化があり、「親と同居するのは美徳」とされる。この家族愛が失業者の受け皿となって、伸縮自在の経済を実現している。スペインの経済学者たちも、この家族の機能に改めて注目している。

 二つ目はアルバイトで日当を稼ぎつつ失業手当をもらう方法だ。職を求める失業者に対し、経営者は労働契約を結ばない賃金労働を持ちかける。社会保険に入らないので、経営者は安く働かせることができ、賃金をちょっぴり上乗せする。労働者は失業者としての登録はそのままにしておけば、2年間は失業手当をもらえる。こうした人々が「失業率50%超」の中にかなりいると見られている。

 そして三つ目は、「スペイン脱出」である。下のグラフを見てみよう。

 これはスペインの海外選挙人名簿をまとめたものだ。赤い部分がリーマンショック後の最近4年間に新たに海外に移住した人々で、いま合計で5万人ほどだが、年々増えている。このうちペルー、エクアドル、ボリビアは旧植民地。ブラジルはポルトガル圏だが、言語が似ているので移民しやすく、2万人と突出している。

 BRICSの一員として高成長を続けるブラジルは、肉体労働者ではなく、IT、建築などの技術者や金融、経営等の専門家を欲しがっている。これに対しスペインは-1.8%成長(12年度予測)だ。職がない大卒失業者にとってブラジルは新天地である。

 この現象を国民はどう受け止めているのだろうか。筆者が聞いて回ったところでは、

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