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2人の日銀新審議委員で何が変わるのか

森永卓郎

森永卓郎 経済アナリスト、獨協大学経済学部教授

 木内登英氏と佐藤健裕氏の2人が日本銀行の審議委員として国会で同意された。2人の就任で日銀の金融政策が緩和に向けて変化するのではないかという期待が一部にある。しかし、私は何も変わらないと思う。

 第一の理由は、2人がごく普通の判断をするエコノミストであり、金融緩和派ということではないからだ。例えば、木内氏が金融緩和で円高を是正すべきと言っても、それは経済学の教科書にも書いてあるごく普通の経済理論にすぎない。佐藤氏が、日銀の金融緩和が不十分だと言っても、日銀の基本姿勢を批判するものではなく、あくまでもスピードを問題にしているのに過ぎない。

 政策委員会を変えるくらいのインパクトを持つのは、リフレ派と呼ばれる岩田規久男学習院大学教授とか、田中秀臣上武大学教授とか、経済評論家の上念司氏といった面々が就任したときだ。彼らなら、彼ら自身の金融理論とデータにもとづいて、日銀の論理と対決することができる。だが、木内氏や佐藤氏は、そこまでの信念を持っているわけでもないし、金融政策の専門家でもないのだ。

 第二の理由は、仮に現時点で2人が金融緩和の姿勢を持っていたとしても、おそらく1週間もしないうちに、日銀思想に染められてしまうだろうということだ。

 日銀審議委員に就任すると、すぐに日銀職員がご進講にやってくる。そして、日銀の論理を叩き込んでいく。日銀のご進講を受けた経験者に聞くと、その話術は実に巧みで、1時間も話を聞いていると、まるで日銀が正義の味方に思えてきて、その論理が正しいと思えてきてしまうのだそうだ。

 だから、歴代の日銀の審議委員のなかで、日銀思想に染められなかった人物は、たった一人しかいない。1998年から2002年まで審議委員を務めた中原伸之氏だ。

 中原氏はいまから10年以上前に、

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