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LIBOR不正操作問題、欧米金融市場混乱拡大への懸念

中口威 内外情勢アナリスト

バークレイズの不正操作

 2005年から2009年にかけてLIBORの不正操作を続けたとして、英国大手銀行バークレイズの会長、CEOとCOOが相次いで辞任した。また同行は同時に金融当局に対する2.9億ポンドの罰金支払いを公表している。

 バークレイズの不正操作は、大きく分けて二つの形態に分類される。

 具体的には、サブプライム住宅ローンを組み込んだ巨額の金融商品の不良債権化と、これを多額に保有する米欧金融機関の経営危機(サブプライムショック)が顕在化し始めた2007年半ば頃までは、自らが販売する各種金融商品の利幅を大きくするために、基本的には、実際の取引金利より高めに誘導する形が中心であった。

 一方、サブプライムショック以降は、自社の資金調達力や財務内容を実態よりも良く見せるため、実際の取引金利より低めに誘導する形に傾斜している。

 2007年後半から2008年にかけて、FRBがLIBOR不正操作の事実を認識し、金融調整窓口であるニューヨーク連銀を通じてバークレイズに繰り返し接触、そのヒアリング内容も踏まえて、2008年6月にはBOE(イングランド銀行:英国中央銀行)に対し、LIBOR決定方式の改善策を提案しているが、同年9月のリーマンショックによる金融市場の混乱のなかで対応は先送りされた。

 加えて、リーマンショック以降加速した、申告金利の急速な低め誘導に際しては、英銀大手ロイヤルバンクオブスコットランド(RBS)やロイズバンキングへの公的資本投入が止む無きに至る過程で、バークレイズの経営状態をも懸念したBOE幹部や当時の労働党政権が関与していた可能性も指摘されている。

LIBORとは

 ちなみにLIBORとは「London Inter-Bank Offered Rate(ロンドン銀行間取引金利)」のこと。指定の複数の銀行(英ポンドの場合は16行)が当日11時時点での取引可能な金利を英国銀行協会(BBA:British Bankers’ Association)に自己申告し、BBAがその(上下4行を除く8行の)平均レートとして日々公表する。このレートが、世界的な金融取引の基準指標となっている。

 例えば、企業向け融資や住宅ローン金利の基準レート、あるいは金融機関が販売する各種デリバティブの算出根拠などとして幅広く活用され、その関連取引の総額は、推計で約360兆ドルとも言われる。さらには各銀行の申告金利が、それぞれの資金調達力、ひいてはその銀行の財務状況を推し量る指標としても活用されており、仮にLIBORの信用失墜、基準指標としての地位喪失などの事態に至った場合、グローバルな経済活動に与える影響は甚大である。

バークレイズ以外への拡がり

 LIBORは、指定の複数の銀行から申告された金利の平均値として算出するもので、仮にバークレイズが申告金利を歪めたとしても、それだけでLIBORを思惑どおりに誘導することはできない。多数の銀行が共謀していないかぎり恣意的な操作は不可能なため、バークレイズ以外の銀行が関わった可能性は極めて高い。

 特にリーマンショック以降の金利の低め誘導に際しては、

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