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金融政策でデフレ脱却は当然、成長戦略は抜本的に考え直すべき

原田泰 原田泰(早稲田大学教授)

 安倍晋三総裁率いる自民党の経済政策は、自民党が設置する「日本経済再生本部」で議論されることになっている。詳細はこれからだが、安倍総裁が自民党総裁選でも述べてきた、デフレ脱却と強力な成長戦略を推進することになるのは間違いない。

デフレ脱却策は完全に正しい

 総裁のこれまでの発言から考えると、デフレ脱却のためには金融緩和が重要で、2-3%のインフレターゲット政策や、円高是正のための大胆な金融政策が必要で、そのためには、日銀の独立性を高めた現在の日銀法を改正することも厭わないとしているようだ。

 経済学の教科書には、物価は金融政策で決まると書いてあるが、日本の経済学者、エコノミスト、日銀官僚だけが、教科書が間違っていると主張している。私は、教科書は間違っていないと考えているので、安倍総裁のデフレ脱却政策はまったく正しいと考えている。

 少なからぬ人々が、いくら金融を緩和しても物価は上がらないと主張しているが、リーマンショック後の円高は、明らかに、世界が大胆な金融緩和をしていたのに、日本がおざなりな金融緩和しかしなかったからである。為替レートとは、ある国のお金と他の国のお金の交換比率なのだから、他国がお金の量を増やしたのに日本が増やさなければ、日本のお金の価値が上がる、すなわち円高になるのは当然である。このことは本欄「円レートの変化は隕石の落下ではない」(2011年10月04日)にすでに書いたので説明は以上に留める。

 円高がデフレを促進したのは明らかである。円が現在の1ドル80円ではなく、リーマンショック前の120円のままだったら、日本の経済状況はまったく変わっていただろう。輸出企業は危機に陥らず、輸入物価は今より1.5倍高く、輸入と競合する産業も今ほど苦しくはなっていない。当然、日本はデフレにはなっていなかっただろう。安倍総裁のデフレ脱却政策はまったく正しい。

 金融政策は独立しているべきだから、政府が圧力をかけるべきではないというのはまったく理屈に合わない。誤った理屈を唱える人に、考えを変えるように圧力をかけるのは当然のことである。金融政策の誤った理屈にも対抗できない総裁に、

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