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日本の大学を簡単に白熱教室にする方法

小原篤次 大学教員(国際経済、経済政策、金融)

 日本の大学は、大人が冷静に話をする最適地かもしれない。米国式の大学なら、学生からの質問攻め(ほほ!と教員を唸らせる内容もあれば、それ自分で調べろよというレベルのものも含めて)にあり、一見、白熱したような授業になる。ディベートの世界である。

 レクチャー型の日本の大学でも簡単に白熱させる方法がある。学生たちに紙一枚を渡して、授業や授業に関連する新聞記事について、質問を書かせることである。デジタル世代は日常、メールで意思疎通している。履修者の前で指名して答えが出ないと思えば、躊躇せず、紙(私の場合は原稿用紙)を配布することにしている。

なぜ若者は、不安なのだろうか

 最近、中学生向け金融教育の公開授業を参観した。公民の授業で、現金通貨、貯蓄通貨、インフレーション、デフレーションなど、大学で扱うような専門用語も飛び交っていた。東京から招かれた講師は、自己責任、経済学的な希少性、トレード・オフと、政策通の政治家やエコノミストが使いそうな言葉を連発していた。市場や効率性を重視する主流の経済学である。

 そうした教育の影響もあるのだろうか。社会科学をマスターしきれていない学生が、不況、空洞化、雇用などの用語にはやけに敏感である。

 最近、学生から解説の要望が多いのはTPPである。では、「TPPとは何か」と逆質問しても、Trans-Pacific Strategic Economic Partnershipはおろか、環太平洋経済連携協定と答えられる学生は多くはない。断片的な情報を受けている状態では仕方が無いところだろう。そして一部の学生は、どうやら反対の意思を明確にしている。

国益と地方益は違うものだろうか

 地方、とりわけ長崎県のような人口減少が顕著な地域では、少子化のほか、都市部への人口移動などから、山間部、離島を中心に耕作放棄地と限界集落をセットで抱えている。2011年11月11日の長崎県知事コメントでは、「TPP問題は、農林水産業のみならず、福祉、医療、労働、金融など様々な分野に影響が生じるのではないかと大変危惧しており、今後、政府が交渉参加に向けた協議を進められるにあたっては、各分野への影響をしっかりと把握し、それらに対する十分な対応策を準備した上で最終的な判断をされるべき」となっている。

 地方紙には、「食料主権のない国に、国民の健康は守れるとは思えない」「平地と中山間地の農業の作業効率の差は大きいが、価格だけで判断すると中山間地の公益的機能を失う」などと解説されている(西日本新聞12月12日付「お茶の間学I」)。

 耕作放棄地面積率は2005年で、全国9.7%、九州12.7%、そして長崎県は27.1%にものぼる(図1)。県内でも、対馬46.0%、五島36.3%から、県央30.5%、県北26.7%、島原20.4%、壱岐13.3%と地域差が大きい。

 都道府県別に見ると、

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