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増税時代の官民もたれ合いを許すな―三菱電機の防衛費過大請求40年

小原篤次 大学教員(国際経済、経済政策、金融)

 総合電機大手の三菱電機は暮れも押し詰まった昨年12月21日、防衛や宇宙関連予算で、多額の過大請求額が判明し、延滞利息、違約金を含めて773億円を国に返納し、そのため業績予想下方修正するという苦渋の会見を開いた。三菱電機は、三菱重工とともに日本の防衛・宇宙産業の中核企業だけに、過大請求が長年発覚しなかった意味は重い。官民の協力と馴れ合いは紙一重である。

 この事件は2011年秋、防衛省が外部からの情報提供を受けた調査で発覚していく。三菱電機は昨年1月から、防衛省のほか、内閣衛星情報センター、独立行政法人宇宙航空研究開発機構、独立行政法人情報通信研究機構、総務省からも調査の要請を受け、事実関係の調査にあたっていた。

 過大請求の主な手口は、実際に行った作業量(人数×時間)とは異なる作業量を記載して請求するものである(図1)。作業量が契約内容を上回ると赤字になるため、逆に作業量が契約内容を下回るときに、過大請求して全体としては利益が計上されるように調整されていた。経費のうち人件費に関連する部分の帳簿を調整することで過大な請求を続けてきたということだ。

 作業量の付替えに加え、材料費や出張費等の費用についても不適切な原価の計上が確認されている。長年にわたる作業量の調整によって、契約策定上の標準となるコストを過大にする効果もあった。

 なお、三菱電機の過大請求をきっかけにして、住友重機械グループの防衛省関連の過大請求も明らかになっている。過大請求額は24億円。

付替えは防衛事業では1970年代から

 三菱電機が現役の役職者を含む従業員及び定年退職した元従業員(役職経験者を含む)に対するヒアリング調査では、遅くとも防衛事業については1970年代、宇宙事業については1980年代初めには、作業量の付替えが確認されている。

 そもそも防衛や宇宙関係で過大請求が起きやすい土壌は、調達が汎用品ではなく特注品であることだ。よって参入できる企業も限られる。限られた業者からの選定という構造の中では、発注側も入札側も馴れ合いになりやすい。

 防衛省によると、三菱電機の受注実績には、03式中距離地対空誘導弾、99式空対空誘導弾、対空戦闘指揮統制システムなどがあげられている。

 官公需の受注をめぐる問題は後を絶たない。防衛省関連では、陸上自衛隊の次期新多用途ヘリコプターの開発事業で官製談合の疑いがあるとして、東京地検特捜部は昨年12月20日、防衛省技術研究本部に所属していた2人を官製談合防止法違反の罪で略式起訴している。防衛省が募った企画競争に、川崎重工業と富士重工業が応じ、選ばれた川崎重工業が、事業の一部を35億2800万円の随意契約で受注している。

http://www.asahi.com/national/update/1220/TKY201212200624.html

http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2012090700002.html?iref=webronza

 尖閣諸島問題や北朝鮮のミサイル実験の成功などを追い風にして、自民党・公明党の連立政権は、防衛費を増額しようとしている。同時に一般歳出の半分が国債費という国民からの借金で賄われるという異常な事態にある。しかも

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