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アベノミクス成功のため日銀をリフレ派で固めよ

森永卓郎 経済アナリスト、獨協大学経済学部教授

 大胆な金融緩和と財政出動を行う「アベノミクス」が本当に景気回復に効果があるのかどうかについて、活発な議論が行われている。私はすでに答えは出ていると思う。野田佳彦前総理が解散を決めて、安倍総理の誕生が確実になってからたった2カ月で、対ドル為替は10円円安になり、日経平均株価は2000円以上値上がりした。アベノミクスが正しいことの何よりの証明だ。

 それでは、アベノミクスによって、本当に日本経済は15年にわたったデフレ経済から脱却できるのかと言えば、私はそうならない可能性が高まってきたと考えている。アベノミクスに効果がないのではなく、大胆な金融緩和が実行できないと思うからだ。

 1月22日に発表された政府と日銀の共同声明では、政府と日銀が一体となって消費者物価上昇率を2%に引き上げることを明示した。安倍総理は2%という数値目標を入れられたことに、大いに満足しているようだ。

 しかし、このインフレ目標政策には重大な欠陥がある。それはデフレ脱却の期限を切らなかったことだ。いくら目標を掲げても、達成時期を明示しなければ何の意味もない。安倍総理は、「諸外国でも期限を切っている例は少ない」と述べていて、今回の期限を定めのない目標設定が、特殊なものではないと主張している。確かにそうだが、インフレターゲット政策の基本は、目標とする物価上昇率に達するまで、無制限に「資金供給」をコントロールするところにある。

 もちろん、日銀も形式的にはこの原則を踏まえている。2014年からは、毎月13兆円の金融資産を買い取っていくことにしているからだ。素人は、それだけ資産を買えば、資金供給が増えると思い込んでしまう。しかし、そこに日銀が仕掛けた罠があるのだ。

 13兆円の金融資産のうち10兆円は短期国庫証券だ。これは、文字通り短期の証券だから、いくら買い取っても、すぐに償還されてしまうので、資金供給は増えないのだ。実際、1月22日に日銀が発表した「『物価安定の目標』と『期限を定めない資産買入れ方式』の導入について」という文書には、次のように書かれている。

 「長期国債と国庫短期証券については、最近の買入れの平均残存期間を前提とすると、上記の月間買入額により、基金の残高は2014 年中に10 兆円程度増加し、それ以降残高は維持されると見込まれる」

 つまり無期限の買い取りは、当初こそ10兆円基金の残高を増やすが、定常状態になると、残高が増えなくなる。つまり資金供給はまったく増えないのだ。

 物価を上昇させようと思ったら、経済成長以上のペースで資金供給を拡大し続けなければならない。そんなことは大学1年生が使う経済学の教科書にも書いてある話だ。もし資金供給を増やさなければ、デフレになってしまう。それがまさに近年の日本で起こった事態なのだ。

 もちろん日銀は、

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