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TPP声明を出した日米首脳会議の裏側

小原篤次 大学教員(国際経済、経済政策、金融)

 世界経済のパラダイムを考えるときに、いくつかの節目がある。そして地球規模の政治主権など存在しないなか、国境を超えて拡大する経済活動は、多様な経済協定でバンドリングされている。

 大恐慌、アジア金融危機、世界金融危機のような世界的な金融危機、国際通貨基金(IMF)や世界銀行、ドル金本位制を生んだブレトンウッズ協定(第二次世界大戦終戦前年の1944年7月の会議)、ニクソンショックのような通貨体制に関するものがある。ニクソンショック、つまり金融政策が重要性を高めた変動相場体制後、G5、G7、そして世界金融危機後、G20と、メンバーを中国、韓国、インドネシア、ロシア、ブラジル、サウジアラビアなどと拡大しながら、浮動性が高まった国際金融システムを支えている。

サービス貿易には人の移動も含まれる

 戦後の貿易・投資体制は、ブレトンウッズ協定を受けて発足した、関税および貿易に関する一般協定(GATT)は、1995年、世界貿易機関(WTO)に変貌していく。大きな違いは商品(モノ)貿易に加えてサービス貿易が対象に含まれたことである。ちなみに1995年は、マイクロソフトのウイドウズ95が発売された年である。ウイドウズ95は、マウスによる簡単操作をアップル社以外のすべてのパソコンに拡大し、IT革命を拡大させていく大きな推進役になった。

 ITはサービス貿易の代表格であり、知的所有権の重要性を決定的に高めた。そして人の移動も各種経済協定の対象に含まれるようになった。日本では、インドネシアやフィリピンからの看護師や介護福祉士の受け入れがシンボル的な政策である。両国家試験の結果は、3月下旬に予定されており、非漢字圏から招かれた彼女たちの悲哀を再び見るのだろう。

WEBRONZAはTPPがお好き?

 貿易・投資システムの議論は、金融・通貨システムよりオープンで行われる。よって前者の方が後者より関係者が多様である。後者はマクロ経済として、国民全体に影響を与える。世界金融危機後、長期間にわたった円高を考えれば分かる。しかも、緊急対応の性格も強く、担当官庁など政策決定者は、限られている。加えて金融市場を相手にする以上、民主国家でも即断即決が求められる。

 他方、貿易・投資システムは、GATTがWTO体制に代わっても、各国で国民各層から様々な意見、要求があがり、政治色が強く交渉が長期化する(注1)。多国間協議のデメリットを補うため、WTO体制でも、経済連携協定(EPA)や自由貿易協定(FTA)のような国・地域間協定が結ぶことが出来るようになっている。

TPP共同宣言を受けた両首脳会見は無かった

 さて、日米同盟関係の重要性を世界にアピールした日米首脳会議。日本では環太平洋経済連携協定(TPP)による共同声明がトップニュースで、これから国内論争、協議、そして調整が本格化していく。

 なお、首脳会議後、両首脳が揃った共同記者会見がなかった。ランチや経済問題を協議する前に、20分程度の時間が報道陣に与えられた程度だ。質問は二つだけ許され、時間は通訳も含めて8分余りに過ぎない。しかも最初の質問は、

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