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税収の弾性値は依然として高い

原田泰 原田泰(早稲田大学教授)

 名目GDPが増えれば税収は急増する、すなわち税収の名目GDPに対する弾性値は大きいと考えている人が多い。私もそう考えている。ただし、そう考える根拠は、どちらかと言えば、名目GDPが減少したとき、税収が急減したときのデータに基づいていることが多い。これまで不況ばかりだったから、どうしてもそうなってしまうのだ。

 これに対して、「これまで名目GDPが減少したとき税収が急減したのは、不況対策で減税をし、不況から脱したときには増税をしていたからであり、税収弾性値は大きくない」という反論がある。反論するなら、具体的にデータで示してくれと言いたいが、誰も示してはくれない。そこで、自分でデータを作って、この反論が正しいかどうかを検証してみたい。

税制変更を考慮して税収弾性値はどうなるか

 税制は複雑だから、どれだけ減税したかは良くわからないことが多い。しかし、幸いなことに、財務省が「税制について考えてみよう」というパンフレットを発行しており、どのような減税をしたのかを整理している。

 これによると、2000年以降の主要な増減税は、04年の0.5兆円増税、所得税から住民税へ3兆円の税源移譲、05年の0.2兆円増税、07年の0.6兆円増税がある。ここで税収はあくまで国の税収だけを考えている。

 税収のデータは、同じく財務省の「日本の財政関係資料」にある。以下で、通常の税収というのは、公表された税収で、修正税収というのは前述の増減税を累積で加減したものである。また、12年度の名目GDPはESPフォーキャスト調査の平均成長率で推計した。

 税収の名目GDPに対する弾性値とは、名目GDPが1%伸びた時、税収が何%伸びるかという係数である。名目GDPが1%伸びた時、税収が3%伸びるなら、税収の弾性値は3となる。

 図1は、縦軸に税収の伸び率、横軸に名目GDPの伸び率を取って、両者の関係を見たものである。データは2000年から2012年までである。図1は、通常の税収と名目GDPの伸び率を示したものだが、その傾きは3.35となる。名目GDPが1%増えれば、税収は3.35%伸びる訳だ。

図1

 同じような図を修正税収と名目GDPで書いたのが図2である。この傾きは3.36となってわずかだが大きくなる。

図2

反論は間違いだがいつまでも税収が急増する訳ではない

 要するに、「名目GDPが減少したとき税収が急減したのは、不況対策で減税をし、

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