メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

成長シンドロームから脱却を

榊原英資 (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト

 日本経済は1956~73年度の高度成長期(実質GDPの年度平均成長率9.1%)から、1974~90年度の安定成長期を(同4.2%)を経て、92年度から低成長期に入っている。ちなみに1991~2011年度の平均成長率は0.9%。この20年はしばしば「失われた20年」などと呼ばれ、昨今の日本経済停滞の結果だと語られることが多い。

 しかし、本当にそうなのだろうか。すでに日本はアメリカに次ぐ豊かな国。2011年の1人当たりGDPは46,000ドル弱と人口4,000万人以上の国ではアメリカの48,000ドル強に次いでナンバー2にランクされている。さらに日本の所得・資産格差はアメリカに比べかなり低いので、恐らく平均的日本人は平均的アメリカ人より豊かだということができるのだろう。

 ヨーロッパの大国も豊かだが、2011年のデータではドイツが44,100ドル、フランスが44,000ドル、イギリスが38,000ドルと日本より若干低いレベルにある。為替レートの変動などでドル建てGDPの値はかなり変わってくるが、日本がアメリカ、ドイツ、フランスなどと並ぶ世界で最も豊かな国であることは間違いない事実だろう。

 とすれば、ここ20年の経済成長率の平均が0.9%であるということは、ある意味では当然のこと。成長段階から成熟段階に入った経済の成長率が1%前後になるのは、むしろ自然なことである。

 例えば2011年のイギリスの成長率は0.76%、イタリアのそれは0.43%。しかも日本の人口は減少局面に入り、2013年1月1日の日本の総人口の概算値は1億2,746万人と前年同月より20万人減少している。日本の1人当たり実質GDPはリーマンショックの時に減少したがその後は上昇し続け、

・・・ログインして読む
(残り:約514文字/本文:約1247文字)