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[2]海外留学支援は国費の無駄づかい(中)

小原篤次 大学教員(国際経済、経済政策、金融)

 まず今回の上下下3本の論考は、

少子化時代の就職活動、人材開発は社会の責務(上)

少子化時代の就職活動、人材開発は社会の責務(下)

私立文系初年度納付金115万円、大学は不都合な真実を語る時だ

と深く関係している。

 また、30年の実務経験から大学に移り、地方における大学の意義とともに、家計における教育費の重みを痛感している。グローバル人材の育成が、政府が優先的に予算を配分することで大学を誘導すべき優先課題なのか、疑問を感じているためである。地方大学で考える問題意識である。

 

 前回も触れたように筆者が初めて米国に留学したのは1983年、在米日本人留学生は1万3000人だった。ちなみにプラザ合意前、1ドル=240円台で推移していた。相当親に資金の負担をかけた。筆者が高校生の1970年代後半、TOEICが生まれ、大学に入ると、日米自動車摩擦で、自動車が米国に進出し、米国の金融界が日本に強力に市場開放を突きつけ始めた時代に過ごした。ただ国内経済はバブル経済を経験し、余裕があった。筆者のような海外志向の学生は40人の英語クラスでたった一人。それでも入社まもなく、海外旅行経験もなく英会話も苦手な同期たちは海外研修や海外勤務に押し出されていった。

 

若者の内向き指向で注目されたデータとは

 一方、若者の「内向き」志向は2010年ころ、2つのデータが注目されたとされる(藤山一郎(2012)「日本における人材育成をめぐる産官学関係の変容」『立命館国際地域研究』第36号)。

 

 ひとつは、筆者もすでに紹介した海外への日本人留学生が2003年から減少傾向にあること。もうひとつは産業能率大学が実施した「第4回新入社員のグローバル意識調査」である。調査は2010年6月末、4月に新卒採用(高卒・大卒等問わず)された18歳から26歳までの新入社員(サンプル400)を対象として、インターネット調査会社を通じて実施された(前年度まで同大学が実施する新入社員研修の参加者)。海外で働きたくないという回答が49%を占めた。わずか4年でしかも調査手法の継続性も「?」が付く調査だった。

 

 働きたくない理由として「海外勤務はリスクが高いから」が56.1%、そして「自分の能力に自信がないから」が54.6%となった。子ども時代、金融不安とデフレ、米国同時多発テロを目の当たりし、世界金融危機後の景気の急落で、就職超氷河期が突然、再来した世代である。1980年代の学生から見れば、この環境下、半分も希望すれば、随分、若者は外向き志向と解釈すべきだったのだろう。

予算配分を検討すると

 次に、予算配分の検討に議論を展開したい。

 短期でも留学生を支援する政府としての本音が、日米関係の重視から、2万人程度、米国への日本人留学生を増やしたいという目標もありうる。その場合、

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