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エジプト、軍事クーデターを誘ったインフレ・失業

小原篤次 大学教員(国際経済、経済政策、金融)

 エジプトは2年余りというごく短期の間に、2度にわたる革命を経験し、混迷時代に入ろうとしている。

 選挙を通じて初めて選ばれたムルシ大統領の就任一年のタイミングで、同大統領の辞任を求めて、大規模な反政府の抗議デモが起きた。エジプト軍によると、1400万人規模のデモが全国各地で実施されたという。

 2011年2月、反ムバラク派のデモを支持したエジプト軍が、30年間続いた非常事態宣言を解除し、自由で公正な大統領選挙の実施を約束し、その後、ムバラク大統領が退陣に追い込まれた。ムルシ大統領拘束後の軍は、議会選挙、憲法改正、大統領選挙との民主プロセスまで、一定限の実権を保持していく可能性がある。

独裁政権崩壊後のインドネシアやフィリピンを想起

 革命や内乱は各国固有の政治、社会情勢などから起きるもので、一般化や他国と比較するのは難しい。それでもあえて振り返ると、エジプトの政治的な混乱は、スハルト政権後のインドネシア、マルコス政権後のフィリピン、つまり長期独裁政治後の国内の政治情勢の不安定化を想起させられた。筆者は2人の独裁者が去った後、無秩序な襲撃から水道、電気などのライフラインの寸断など多様で深刻な混乱を現地で見聞している。長期化する混乱に失望し、母国を去る若者も少なくなかった。

 エジプトは短期間の間に、反ムルシ大統領でまとまったものの、ムルシ辞任という共通目標達成した後、少なくとも、ムスリム同胞団支持者、ムスリム同胞団以外のイスラム団体・グループ支持者、旧ムバラク支持者など反イスラム団体、学生など民主化運動、そして軍という政治主体が混在する。2度の革命に最終判断を与えた軍の存在は増すことだろう。さらに、

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