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金融緩和を巡る現実と妄想

原田泰 原田泰(早稲田大学教授)

 アベノミクスの第1の矢、大胆な金融緩和は間違いなく成功している。金融緩和が始まった時には、株価が上がっても円安になっても一部の大企業が利益を得るだけで、国民の利益はないという批判があったが、そうではないことが徐々に明らかになってきた。だからこそ、安倍政権が参議院選挙でも大勝したのだろう。

 株価や円安は将来を予想する指標にすぎず、大胆な金融緩和の目的は、生産と雇用を増やし、日本経済に本来の力を発揮させることである。だから、生産や雇用に関する指標の方が最終的には重要である。そして、そのような指標の改善が明らかになってきた。

 図1図2は、輸出、生産、消費、雇用、物価の動きを見たものである。図に見るように、すべての指標が、大胆な金融緩和政策を採用すると確実に期待された安倍政権の発足以来改善している。多少煩瑣かもしれないが、それぞれの指標を個別に見ていこう。

消費が伸びていることが重要

 図1に見るように、鉱工業生産指数、輸出数量指数、有効求人倍率、消費総合指数が上昇している。常用雇用指数はほとんど改善していないが、これは本格的な雇用の改善まで時間がかかるということである。また、生産は2012年2月をピークとして2012年12月まで減少していたことも考慮すべきである。

 この間、生産が減少しているにも関わらず、雇用はまったく減少していなかった(雇用は全産業で、生産は鉱工業に限るという違いはあるが)。日本の企業は、依然として、不況になってもすぐにはリストラしないのである。ということは、景気が良くなっても、これまでの社内の過剰雇用を使い、すぐには新規採用を増やさないということである。

 ここで注目すべきは消費総合指数の上昇である。金融緩和の効果は輸出型の大企業に限られるという議論がいまだになされるが、

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