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アベノミクス成功しても邦銀の収益性改善は難しい

根本直子 早稲田大学 大学院経営管理研究科 教授/アジア開発銀行研究所、 エコノミスト

 与党が過半数の議席を獲得し、2007年から2009年と2010年以降現在まで続いた衆参議院のねじれ状態が解消した。政府においては成長戦略を進めやすくなり、政策の予見性が高まれば、企業の設備投資にもプラスに働くだろう。

 「アベノミクス」が成功して景気回復が長期にわたれば、銀行業界にも貸し出しや手数料増加などのプラス効果が期待できる。しかし成長率の中長期的見通しは、金融緩和策や積極的な財政政策だけではなく、現政権が構造改革を進め、潜在成長率をどの程度高めることができるかにかかっている。

 また景気回復だけでは、国際的にみて低い邦銀の収益性を改善させることは難しい。預金が増加する一方で企業や個人の借り入れの需要が弱く、貸出利回りが趨勢的に低下していることが低収益の主因であるためだ。

 資金の需給構造が変わるためには、国内での投資効率を高めるような制度改革や規制緩和が進むことに加え、企業が投資を積極化させ、個人も預金から他の資産へ投資の多様化を進めることが必要となる。また、銀行の側でも新たな貸し出し先や手数料ビジネスを開拓したり、適正なスプレッドを確保しなければ、収益性の改善は難しい。このような取り組みが成果を上げるには時間を要するだろう。

 2010年以降、大手銀行を中心に海外での保有資産が増えているが、収益性がより高い海外事業に成長機会を求める傾向は今後も続くとみられる。

預貸率の低下が続けば利ざやはさらに縮小

 邦銀の収益性は、国際比較で最も低い部類に入る。主要行の金利収益をリスク資産で除した収益率を比較すると、2012年は、米国2.9%、フランス1.7%、中国3.0%に対し、日本は1.0%だった。低収益性の要因である貸出利ざやの低下は、今後も続く可能性が高い。

 第一に、銀行の貸し出しの多くは短期市場金利に連動しているが、日銀は2%の物価安定目標が「安定的に持続するために必要な時点まで」量的・質的金融緩和を続ける意向であり、当面短期金利はゼロ近辺に留まるとみらる。

 第二に、貸し出しをめぐる競争は激化している。これは、

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