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あえて、「ブラック企業」という言葉を使わずに議論してみる

常見陽平 千葉商科大学国際教養部准教授 いしかわUIターン応援団長  社会格闘家

 私は大学院生であり、大学の非常勤講師でもある。稀有な立場だと思う。最初に2つのエピソードをご紹介しよう。

 昨年、履修していた科目である「事件」があった。私は、社会学研究科に在籍しているが、他学部科目として、商学研究科の科目を履修した。商学部の科目は、企業のケースを読んで議論することが多いのだが、取り上げられたケースほぼすべてに共通点があった。ずばり、「ブラック企業」だとして話題になっている企業だらけなのだ。

 ブラックだと噂されているだけでなく、実際、過労死事件や、それをめぐる訴訟も起きている企業だった。なるほど、社会学研究科の視点で言うならば、労働問題のケースとして取り上げられそうな企業も、商学研究科ではベストプラクティスになるわけか。まさに、労使の視点の差を感じてしまった。

 次は大学の非常勤講師の仕事におけるエピソードである。教え子の職場に関する話を聞くと、ブルーになる。入社した企業がブラック企業で、すぐに退職してしまったという話をいくつか聞いた。大卒は3年で約3割辞めるが、数カ月で離職しているケースも散見される。内定報告でも「どうせブラック企業ですから」と言う学生もいる。実際、卒業直前に内定を辞退したりもする。

 ブラック企業問題は、日本における今、そこにある問題である。ただ、この問題はいつも議論がこじれる。ブラック企業の定義が人によって違うから話がかみ合わない。経済環境が厳しいからしょうがない、日本の企業はどこも法律を破っている、最初はブラック企業に入った方が成長できるなどの言説まで飛び出す。

 セクハラという言葉ができたおかげで

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