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コーポレート・ガバナンスと「追い出し部屋」

大鹿靖明 ジャーナリスト・ノンフィクション作家(朝日新聞編集委員)

 オリックスの会長兼グループCEOである宮内義彦氏は「コーポレート・ガバナンス」を重視することで知られた著名な経営者である。そのオリックスが買収した不動産ディベロッパーの大京で、人道上看過しえないようなリストラ手法が表面化した。いわば進化した「追い出し部屋」とも言える問題である。

「気づき」を与える教育研修が名目

 大京の「追い出し部屋」問題が表面化したのは、私が7月14日に報じた朝日新聞の記事だった。報道時点では、十数人の社員が「『気づき』を与える教育研修に行ってほしい」といわれて、今年4月から人事コンサルティング会社ベクトル社に出向させられていた。

 出向させられた多くの者が、前年の暮れ、上司に「業績評価が悪い」「成績が良くない」などと言われて退職を勧められ、断ると「研修」名目で出向を命じられた。3月28日に大京とベクトル社がおこなった出向説明会では、英語やパソコン能力の向上、中古マンション物件の仕入れ先の開拓などが出向先での研修内容とされていたが、実際に4月5日にベクトル社に赴任してみると、内容はずいぶん違った。

 ベクトル社が、外部の他企業から請け負っているビジネスの働き手に活用されたのである。JINSメガネやファミリーマートなどのパートやアルバイトの採用代行や、ベクトル社の人事コンサルティングサービスを受け入れてくれそうな顧客のリストアップなどに彼ら彼女らは従事させられている。この過程で前途を悲観して2、3人が退職したという。

門外漢の保険ビジネスにも

 大京はこれ以外にも、希望退職に応じなかった人を中心に2009年3月、AIGエジソン生命に20人を出向させている。そこでは四半期ごとに年間払い保険料30万円を獲得するようノルマが与えられた。

 保険ビジネスにまったく門外漢な出向者は、

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