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ドコモもiPhone販売、得をするのはアップルだけ!?

小原篤次 大学教員(国際経済、経済政策、金融)

 「日本もようやく開国しました」。長崎で講演するときには、このフレーズを入れる。海外ブランドの電気製品に見向きもしなかった日本の消費者が、電気製品でも海外ブランドを喜んで購入するようになったからだ。浸透した海外ブランドの代表がスマートフォン(多機能携帯電話)、とくにiPhoneである。

 米国アップルが10日に開いた新製品発表会で、低価格の新製品iPhone5cが「2年契約で99ドル(約1万円)」と映し出され、日本でも中国(携帯契約者数11億人)でもiPhoneを宣伝するWEBサイトがオープンした。価格を訴求するプレゼンテーションによって、iPhone、いや「スマホ3.0」が、新興国まで販売を拡大させ、先進国では周辺ビジネスで収益を確保する時代であることを明確に示した。

 もうひとつ注目されるのは、その色である。発表されたiPhone5cの5色は、中国や台湾メーカーなどのアンドロイド・スマホの売れ筋に近い。また後継機種iPhone5sには新たにゴールドが入る。中国やインド市場を意識したのだろう。これまでの日本人は好まないような色であるが、スマホ世代は受け入れる可能性はある。米国マイクロソフト(MS)のオフィスソフト、エクセルやパワーポイントなどが描くグラフやデザインが、WEBや日常生活を通じて、すでに日本の色趣向を変えようとしている。これも開国だ。

 このほか、独自規格を採用し、つまり開国を避けてきた世界最大の中国チャイナモバイル(携帯契約者数7億人)とNTTドコモがiPhoneの販売代理店に加わるなら、「価格」に注目したい。上記のように、端末を安く見せて、毎月の通信料に上乗せする、事実上のクレジット販売の可能性は低いと思う。

 低価格競争を見込み、世界のメーカーは、ビジネス・ポートフォリオの入れ替えを急いでいる。韓国のサムソン電子を中心とする米国グーグルのアンドロイド陣営が、iPhoneを大きく上回り、インドなどでは地場メーカーが台湾や日本などの部品を組み合わせ、すでに低価格スマホを提供していた。一方、日本メーカーの存在は無いに等しい。ちょうどリーマンショックや円高にあえぐ5年間に起きた劇的な変化である。

 プロ野球「ソフトバンク・ホークス」の本拠地、ヤフオクドーム(福岡市)の広告には、バンクオブアメリカ・メリルリンチ、ドイツ証券など欧米系投資銀行とともに、ファーウェイ(Huawei)、ZTEの中国系携帯・通信メーカーが並ぶ。この球場は、かつて流通最大手のダイエーが建設し、経営破たん後、米国の投資ファンド、シンガポール政府系ファンドを経て、ソフトバンクが買い戻した。球場でも海外ブランドの浸透が始まった。

iPhoneはそれほど魅力的なのか

 6日の朝日新聞や日本経済新聞電子版は、NTTドコモが近く、アップルの新機種iPhoneの販売を開始するという観測をそろって報じ、秋のスマホ商戦が事実上、始まった。それらを簡単にまとめると、iPhoneは「もはや飛びぬけて魅力的な商品ではない」。消費者のお財布の紐は案外、保守的ではないかと思う。

 日本は世界的にもiPhoneブランドの支持が高い市場とはいえ、

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