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リニア中央新幹線、人口減少を考慮しない奇異な収支計画

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

 JR東海が、リニア中央新幹線の駅やルートの最終案を発表した。運賃・料金は名古屋まで(2027年開通)が現状より700円、大阪まで(2045年開業)が1000円高くなるだけと言う。JR東海の収入(単体)は1兆2千億円程度だ。それが9兆円も投資する大工事なのに、こんなに安くてすむのは不思議である。

 同社が国土交通省に提出した資料の「収支想定について」を読むと、そのカラクリが分かる。この国の急激な人口減少を考慮に入れておらず、輸送量(乗客数×km)が今後2050年まで23%も増え続けるという(グラフ1)、どうにも信じがたい予測が前提になっているのである。

 同社は2010年に国土交通省に超電導リニア新幹線の建設計画書を提出し、翌11年に認められた。計画書はリニア建設の意義について「日本の大動脈輸送の二重化を実現し、将来のリスク(大地震等)発生に備える」、「経済社会に大きな波及効果があり、海外展開をにらんでビジネスチャンスが拡大する」と述べている。

 筆者もその意味付けに異論はない。だが、認可の根拠となった収支想定が、「まず建設ありき」であるために無理な試算になっているのが気になる。

 順を追って説明しよう。想定では名古屋が開業する27年のJR東海の収入は今とほぼ同じ1兆2千億円だが、10年後の37年には10%増の1兆3500億円に上昇。その後ほぼ横ばいを続けた後、大阪開業の45年には一気に27%増の1兆4700億円に達し、その後はずっと横ばいになる。

 収入が増える理由として、時間短縮により航空機のお客がリニア新幹線に移って来る、東海道新幹線の利用者が料金の高いリニアに切り換える、などを挙げている。

 収入の年ごとの予測を、JR東海全体の新しい運賃・料金で割り算し、輸送量を算出したのがグラフ1である。

 現在から名古屋開業時までは431億人キロで横ばいだが、開業10年後には今より7%増の460億人キロになる。その後再び横ばいになるが、45年の大阪開業で一気に23%増の529億人キロに増える。

 輸送量は乗客数に利用キロ数をかけたものだが、キロ数はほぼ一定しているので、結局、乗客数が右肩上がりで増え続けると想定している。リニア開業当初は物珍しさで乗客が増えても、落ち着けば東海道新幹線との食い合いになる。期待が大きすぎるのではないだろうか。

 昨年1月に国立社会保障・人口問題研究所が発表した最新の人口予測(グラフ2)を見ると、

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