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シェフや板長は何をしていた~阪急阪神問題と料理人の力の衰え~

原田泰 原田泰(早稲田大学教授)

 バナメイエビを芝エビ、ブラックタイガーを車エビ、牛の油注入の霜降り肉を本当の霜降り肉、普通のネギを九条ネギなどと虚偽表示していたことが大問題になっている。阪急阪神ホテルズの一件だ。

会見の冒頭で謝罪する阪急阪神ホテルズの出崎弘社長=2013年10月28日午後8時4分、大阪市北区、水野義則撮影会見の冒頭で謝罪する阪急阪神ホテルズの出崎弘社長=2013年10月28日午後8時4分、大阪市北区、水野義則撮影

 例によって当の企業の経営者らが出てきて揃って頭を下げるところをテレビが映し出すとともに、シャッターの音が次々と鳴るといういつもの光景だ。これに対して、私が不思議に思うのは、板長やシェフは何をしていたのかということだ。

 少し前まで、板前もコックも腕を頼みにした職人で、経営者の言うことを聞かなくて困っていた。料理人にしてみれば、自分は良いものを出したい。とりあえず金を払うのは店なのだから(もちろん、最終的に払うのは客だが)、最上のものを出そうとする。

 店としてはそれでは困る。味と値段には折り合いを付けなければ店はやっていけない。困った店が考えたことは、料理人を経営者の一員にすることだ。腕の良い料理人を婿にするというのが昔の解決法だったが、現在では、

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