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[2]雇用の格差で割を食う若者たち

原田泰 原田泰(早稲田大学教授)

 もっと微妙な理由で若者が割を食うこともある。雇用の質が低下している。若者は新たに雇われる訳だから、雇用の質が段々と低下するときには若者の雇用の質がまず低下する。

 図1は、年齢別の非正規雇用の全雇用に占める比率を示したものである。図ではデータの関係から、1998年以前は2月、99年以降2001年までは2月と8月、2001年以降は1月、4月、7月、10月時点のデータを示しているので、最近の期間が横に長く表示されることに注意されたい。この図から次のようなことが分かる。

 まず、非正規の比率がどの年齢層でも上昇しているが、15-24歳(在学中を除く)、25~34歳の若者のところで顕著である。35~44歳、45~55歳層では、2004年までは上昇してきたもののその後は横ばいであるが、25~34歳層ではそれ以降も上昇している。15-24歳層では2005年から2008年までは景気回復を反映して低下してきたが、その後再び上昇している。要するに、非正規率は若年層で上昇したのである。

 非正規労働者であることは、所得が低いだけでなく、保障がないということである。非正規社員では、厚生年金にも医療保険にも雇用保険にも入れない。非正規社員の収入で、自分で国民年金や医療保険に入るのは大変だ。非正規社員が解雇されれば、明日からでも路頭に迷うということになる。

これまでのやり方では雇用を増やせない

 このような現状に対して、より良い雇用を創出するという考えと、生活の安心を再構築するという2つの考えがある。もちろん、2つともするという考えもある。雇用を創出するという考えはすでに採用されてきた。90年代、政府は公共事業を拡大して、無理やりに雇用を作ろうとした。しかし、それは失敗したと言っていいだろう。また、公共事業が創出する雇用の多くは、

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