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やはり、最低賃金の引き上げが必要だ――歴史の教訓に学べ

齋藤進 三極経済研究所代表取締役

 春の到来とともに、大手企業のいくつかが、基本給の引き上げを含む賃上げをするという。それが一部の大企業だけではなく、その他の大企業、中堅・中小企業にまで広がるものであるかは、大いに議論が分かれよう。

 筆者は、本年2月18日付けのWEBRONZA掲載の「≪シリーズ≫データで考える日本の針路(17) 賃上げに本気なら、安倍政権は最低賃金の大幅引き上げ法案を国会に提出せよ」で、日本の現行の最低賃金を5割から2倍に引き上げることを提唱した。

 そのコラム内で、日本の現行の最低賃金の水準は、「経済先進国」としては恥ずかしい程の低水準であり、それが最近15年余りの日本が見習った米国と同様の大規模な貧困問題を招来している根幹であることを指摘した。

 その米国では、2011年秋には、貧富の格差の是正を訴える『Occupy Wall Street運動』が起きた。その運動が主張したのは、トップ1%に所得・資産が集中していることの是正だった。

 その大衆運動の主張を裏付けるかのように、米国連邦議会予算局は、2011年10月に、『1979年から2007年の間の家計所得分布の傾向』と題する調査報告書を公表した。

 なぜ最低賃金の引き上げが必要なのか。こうした経緯を踏まえ、歴史的な視点から考えてみよう。

 1930年代の大恐慌・大不況の原因に関しては所説ある。その一つは、大恐慌に至る過程で、所得・資産が極少数者に集中し過ぎたということがある。

 過度な集中の結果の余剰金融資産は、株式市場などの大規模投機に向かい、産業の設備投資を急拡大し、過大な生産能力を作り出した。そのピークで起きたのが、株式相場の大暴落、設備投資の急停止による経済活動の急激な低迷、

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