メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

TPP交渉は妥結か漂流か

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

 オバマ大統領が訪日する4月にかなりの前進がないと、TPP交渉は漂流するのではないかという報道がなされている。今の状況からTPP交渉を予測してみよう。

 日米の農産物交渉が交渉全体をハイジャックしているのは事実である。しかし、それ以外にも、アメリカと豪州等との間に医薬品についての知的財産権の問題、アメリカは繊維製品、砂糖、カナダは乳製品、鶏肉、マレーシア、ベトナム、シンガポールは国営企業、途上国は労働と環境、についてそれぞれ問題を抱えている。

 アメリカは今年11月に中間選挙があるので、今年合意をするのであれば4~5月がデッドラインとなるが、以上の問題がこの2ヶ月の間に急転直下解決されるとは、到底思えない。つまり、今年中の妥結は困難と見るのが、妥当だろう。しかし、漂流するのかと聞かれれば、それはないだろう。

TPP交渉の中の日本

 日本の主張はどう受け止められているのだろうか?

 自民党や国会の委員会は、コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖などを関税撤廃の例外とし、これが確保できない場合は、TPP交渉から脱退も辞さないと決議している。

 日本の政権内では、安倍総理がオバマと会って、アメリカは工業製品(自動車)、日本は農産物にセンシィティビティがあることを認め合ったはずではないかという見方がある。しかし、アメリカとしては、センシィティビティがあるとは認めたが、それは関税を維持するということではないという理解だろう。

 アメリカは、自動車の関税を撤廃するまでの期間を長くすることが、センシィティビティの反映だとしている。日本の農産物についても、20年という長期の関税撤廃期間を認めるので、センシィティビティを考慮しているではないかと反論されれば、日本は再反論できない。

豪、カナダなども認めない日本の主張

 また、5品目の関税維持の国会決議は、首脳会談以降に行なわれたもので、アメリカとしては、日本の勝手な話だというものだろう。アメリカだけではなく、豪州、カナダ、ニュージーランド、ベトナムなどの他のTPP交渉参加国も、日本の主張を認めない。日本国内でも、

・・・ログインして読む
(残り:約1583文字/本文:約2468文字)