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日米首脳会談でも物別れ、TPP交渉で日本が逃がした「大魚」とは

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

 TPP交渉は、日米首脳会談でも決着・合意できなかった。大筋合意を達成したいという両首脳の決意があったにもかかわらず、「大きな進展を確認した」というメッセージを出すことさえできなかった。

 5月にTPP全体の首席交渉官会合が予定されているが、首脳でも決着できなかったものが、事務レベルで決着できるはずがない。今年11月のアメリカ中間選挙が終わるまでは、TPP交渉の大筋合意は不可能になったといえる。結局、この機会を逸したことで、「TPP交渉は妥結か漂流か」(3月24日付)で述べたとおり、TPP交渉は2015年の決着となるだろう。

 今回、日本の報道や政治家の発言を聞くと、アメリカがかたくなな態度をとり続けたために合意できなかったという意見が多い。しかし、中国に対して日米同盟が強固なものであることを示すために、アメリカはTPPでの関税撤廃という原則を放棄してまでも、日米合意をまとめようとしたことは明らかだ。それが、長時間に及ぶ甘利大臣とフロマン通商代表との協議に現れている。

 「関税を撤廃しろ」、「いや維持したい」というやりとりだけでは、数分も続かない。関税維持を前提として、最終的な関税率、低関税の輸入枠の量、輸入が急増した場合のセーフガード措置などについて、相当突っ込んだやり取りが行われたはずである。

 オバマ政権は、オバマケアなどを巡る共和党との対立によって、弱体化している。それなのに、関税撤廃を譲らない、国内の牛肉・豚肉業界、アメリカ議会の関係議員の反対を振り切ってまでも、オバマ政権は日本の農産物の関税の存続を認めるという大きな譲歩を示した。アメリカ政府は国内関係者を説得できないかもしれないという相当なリスクを覚悟の上で、TPPの大筋合意を目指して、日米首脳会談に臨んできたのである。

 これに対して、日本はどうだったのか?あくまでも農産物5項目全ての関税維持と大幅な削減回避に固執した。牛肉・豚肉については、

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