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いっそ東大を私学に! 学長を強化しても変われない国立大学の現実

小原篤次 大学教員(国際経済、経済政策、金融)

 国立大学が法人化され、11年目に入った。安倍内閣は4月25日、グローバル競争力強化など国立大学の改革促進を目指し、学長のリーダーシップを強める学校教育法と国立大学法人法の改正案を閣議決定し、国会に提出した。学校教育法改正案では、学長の改革を妨げるとの批判が出ていた教授会の役割を限定的にするのが目玉という。

賛否両論の国立大学法人法改正案

 賛成論としては、5月1日の産経新聞主張は、「教授会にお伺いを立てなければ、ことが進まない」という旧態依然の体制を変革できるか。「大学の学長権限強化を柱とする学校教育法改正案などのねらい」としている。「世界に目を向ければ、東大、京大などトップクラスでも教育研究環境のさらなる改善を迫られ、改革なしに勝ち残りはできない」とグローバル競争の視点を強調し、「魅力ある大学に向け、改革をやり遂げられる制度を探ってほしい」と注文している。

 4月29日の読売新聞社説も、「学長が思い切った改革を進めようとしても、教授会の反対で実現できない」と教授会の弊害を指摘しながら、学長が人事や予算の権限を適切に行使することで、「優秀な研究者を積極的に採用すれば、大学の国際競争力を高めることにもつながろう」と改革の効果に期待している。

 他方、4月29日の北海道新聞社説は、「大学の根幹である自治・自発性や研究の自由を揺るがし、活力を奪うことにつながらないか」と改革に対する危惧を示している。さらに、権限の集中を掲げる背景には、「世界ランキング100位以内に日本から10大学を入れたいとする安倍晋三政権の国際競争力強化戦略がある」と指摘している。また、4月25日の毎日新聞は、改正反対の署名活動の呼びかけ人の一人、松田正久・愛知教育大前学長のコメント、「学長に権限を与えれば改革がうまくいくというのは幻想だ」を紹介している。

 しかし、遠山プランに触れたものが見当たらない。国立大学改革の原点は2001年、小泉政権時代の経済財政諮問会議で出された大学(国立大学)の構造改革の方針にさかのぼる。当時の遠山敦子・文部科学省大臣の名前から、遠山プランと呼ばれる。遠山氏は文部官僚初の女性キャリアで、大臣の座を得た人物である。

 国立大学の構造改革方針は、以下の3つにまとめられた。書きぶりは論点メモのような荒削りな表現である。各紙が触れた大学経営や国際競争については、

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