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実質的な雇用悪化、不安隠せぬ学生たち

小此木潔 ジャーナリスト、元上智大学教授

3年の夏からの緊張と不安

 失業率や有効求人倍率が改善してきたが、若者たちの多くが雇用の将来に明るい展望を描くようになったかといえば、そうは言えない。私の知る限り、大学生たちは2年生までは学生生活をおおいに楽しんでいるが、就職活動に取り組む3年の夏あたりから、緊張と不安の表情を浮かべはじめる。

活発な意見が交わされる授業のひとこま活発な意見が交わされる授業のひとこま

 私は大学の教員として、ジャーナリズム論などの講義を担当している。そのなかに、時事問題について学生たちが自由にテーマを決めてグループごとに発表し合う授業がある。彼らが選ぶテーマは消費税、アベノミクス、サッカーW杯、ウクライナ問題と、多岐にわたる。私としては、学生たちが広い視野で物事を考える力をつけるよう期待している。

 最近ではいわゆる「残業代ゼロ」法案をめぐって、興味深いやりとりがあった。

 発表グループは、残業代ゼロのメリットとデメリットについて、整理した結果、メリットとして「成果主義化、仕事の質の向上、モチベーション向上、会社の資金繰り・業績好転」などを挙げ、デメリットとしては「所定労働時間の概念消失、会社のブラック企業化」などを並べた。

 これについて、聞き手の間から「どの立場から見るかで、評価が変わるのではないですか。誰から見てのメリットなのかをもう少し整理しないといけないのでは」という質問が出た。「いい質問だね」「そこを掘り下げたいね」といった反応が教室内で広がった。

「そもそも残業ゼロを目指すべき」

 授業の終了時には毎回、学生たちが書いた「リアクションペーパー」(通称リアぺ)を集める。そこにはグループごとの発表や講義の感想などが書かれていて、「残業代ゼロ」法案の場合も賛否とその理由がアルバイトなどの体験とともにしっかりと書かれていた。

 「私のアルバイト先では人手が足りず、社員の労働環境が悪い。どんなに働いても残業代は支払われない。残業代ゼロ法案が通ると、その影響でこうした会社がますます増えるのではないか」

 「これまででもサービス残業が問題になっているのに、

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