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秋に米価は暴落する

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

 今秋米価が暴落する。すでに、先物価格は昨年に比べ3割も下落している(10月に引き渡される米の価格は60kg あたり2013年12,350円→2014年8,810円)。大幅な過剰在庫が存在するからだ。その原因を作ったのが、農協の全国組織である全農である。なぜこうなったのか。簡単に説明しよう。

 2012年産は4年ぶりの豊作となった。他方、同年産米の全農と卸売業者の相対取引価格は、60キログラム当たり16,501円となっている。震災の影響で高値となった11年産をさらに上回り、10年産12,711円に比べると30%も上昇した。消費は減少傾向が続き、生産が増えているのに、価格が上がっているという不思議な現象が起きた。13年産も前年を上回る豊作となった。それなのに、米価は依然として14,500円程度の高い水準を維持した。

 米も他の商品と同じく、供給が増えれば価格が下がるし、供給が減れば価格は上がる。それなのに、需要と供給の道理から離れた動きをしたのは、米流通の5割を牛耳る全農が、高い米価を維持するために、供給を抑えたからである。

 しかし、米が全農に集まっているのに、供給を制限すれば、全農が抱える在庫が増える。11年、12年6月の民間在庫は180万トンだった。それが13年6月には224万トンになり、14年6月には257万トンになると予想された。農協や卸の団体などでつくる米穀安定供給確保支援機構が、機構が持っている約220億円の過剰米対策基金を全額使い切って、35万トンを買い取り、市場から隔離することにしたため、14年6月の在庫は222万トンに低下した。

 だが、それでも高い水準であることは間違いない。12年と比べると、依然全農は42万トンの過剰在庫を抱えている。しかも減反が目標通り達成されていない(過剰作付がある)ため、14年産米が平年作でも19万トンが新たに過剰米として上乗せされる。全農の過剰在庫は米流通量の1割にも及ぶ60万トンに増加する。

 在庫が増えると、農協の保管経費が上昇し、農協経営を圧迫する。このため、

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