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中国の戸籍制度改革、「身分差別」は解消されるか

小原篤次 大学教員(国際経済、経済政策、金融)

 中国政府は7月30日、戸籍制度の改正方針を発表した。日本でも、2020年を目標として、都市戸籍と農村戸籍の統一や農村戸籍の廃止などとして、報じられている。

 中国国務院が発表した規定によると、人口規模に応じて、農村から都市戸籍の変更要件を定めている。戸籍制度は、農村から都市への人口移動を制限し、教育や社会福祉など制度上の差別制度となっていた。戸籍制度に絞れば、中国問題は経済的な格差ではなく、制度上の身分差別とさえ言える。人口政策では、中国政府はすでに一人っ子政策の緩和方針も掲げている。

 日本国内に目を向けても、中国人は、観光客、留学生、アルバイトや研修生からグローバル人材の供給源として期待されている。また日本も少子化や人口減少の課題がのしか かるなか、中国の新しい政策の成果は日本にも無縁ではない。

 今回の改正方針は、中国の都市を「小都市」、「中都市」、「大都市」、「特大都市」の4つに分類し、農村戸籍から都市戸籍への変更要件を示している。人口が小規模な都市の要件は緩く、逆に、人口が増えるほど、要件が厳しく決められている。

都市戸籍の取得要件を緩和

 中都市は50〜100万人、大都市は100〜500万人、特大都市は500万人以上の都市を対象としている。現在、香港を除いて、上海市、北京市 天津市のほか、広東省の広州市、深セン市、東莞市、そして湖北省武漢市である。これまでは、都市の行政的な格付けに応じて3つに分類されていた。

 小都市の要件は、職業の有無を問わず、分譲、賃貸問わず、居住地があれば、都市戸籍を獲得できるとされている。一方、特大都市では、居住要件のほか、社会保険料の納付状況のほか、上限が定められ、学歴、企業経営などポイント制で限定的に都市戸籍が獲得できる。中都市では、社会保険料の納付期間を3年、300〜500万人の大都市では5年と定めている。

 つまり、上海市、北京市など大都市部への人口集中を抑制して、地方の小都市に人口を分散させる目的が明確に示されている。地価高騰、環境面や治安面を考えると、

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