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新内閣とTPP交渉の行方、カギ握る西川農相

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

 安倍改造内閣が発足した。留任者も多く、ごく一部の人を除き、政策通や実力者を集めた重厚な布陣だと言ってよいのではないかと思われる。半面、新人の起用が少なく、入閣を期待していた多くの国会議員の人たちはがっかりしたことだろう。

 新内閣が直面する課題として、集団的安全保障、地域再生と並んで、消費税の引上げ、TPP交渉は、引き続き重要なイッシューである。そのため、麻生財務相、甘利経済再生担当相が留任したのだろう。このうち、TPP交渉はアベノミクスの第三の矢の目玉であるとともに、他の重要課題と異なり、他国との交渉によって決定されるという特別な性格を持っている。

 そのTPP交渉は、新内閣によってどのように推進されていくのだろうか?もちろん、中心となるのは、甘利経済再生担当相であることは間違いない。これによって、日本政府の交渉の継続性が保たれることになる。

 しかし、前内閣と決定的に違うのは、TPP交渉のうち、日本にとって最も難関である農産物関税を担当する農相に、自民党TPP対策委員長である西川公也氏を据えたということである。

 同氏は典型的な農林族議員であるが、安倍首相の要望で自民党TPP対策委員長に起用され、TPP交渉参加に向けて党内の意見調整を行うとともに、TPP交渉参加後はアメリカやオーストラリアなどのTPP交渉参加国の担当者とも接触し、交渉の進展に貢献してきた。この論功行賞として、同氏が入閣するだろうということは、さまざまなメディアが報じてきた。

 安倍首相も同氏を農相とすることでTPP交渉の加速を狙っているのだろう。確かに、西川氏は農産物関税を直接担当する農相となった。存分に手腕をふるうことを安倍首相は期待しているのだろう。

 前任の農相は存在感が薄かった。TPP交渉だけではなく、減反見直し、農協改革など、大きく困難な農政課題は、農相ではなく、自民党内で決定されてきた。しかし、決定されたことを理解し、国会等で説明するうえで、前農相は極めて適任だった。安倍首相の意向を踏まえ、自民党内の反対意見を抑えてきたのが、農林族幹部である西川氏だった。

 西川氏が入閣したことは、自民党内の反対意見を抑える人がいなくなることを意味する。2009年に農相となった石破茂氏は減反の見直しに手をつけようとしたが、

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