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農協改革をどう見るか(下)

農林水産省、農協、農林族議員の密接な関係に、大きな亀裂が生じた意義

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

規制改革会議の農協改革案

 食管制度は廃止され、農地制度も改革されてきたが、これまで誰も、農協には手をつけられなかった。しかし、2014年5月政府規制改革会議がまとめた農協改革案は、画期的なものだった。

農家と農業の競争力をどう高めていけるのか…

 第一に、農協の政治活動の中心だった全中(全国農業協同組合中央会)や都道府県の中央会に関する規定を農協法から削除する。全中は系統農協などから80億円、都道府県の中央会が徴収するものをいれると300億円超の賦課金を、徴収してきた。

 農協法の後ろ盾がなくなれば、全中等は義務的に賦課金を徴収して政治活動を行うことも、強制監査によって傘下の農協を支配することもできなくなる。

 第二に、全農やホクレンなどの株式会社化である。これは、協同組合ではなくすということである。全農を中心とした農協は、肥料で8割、農薬、農業機械で6割のシェアをもつ巨大な企業体であるのに、協同組合という理由で、全農やホクレンには独占禁止法が適用されてこなかった。さらに、一般の法人が25.5%なのに 19 %という安い法人税、固定資産税の免除など、様々な優遇措置が認められてきた。

 第三に、准組合員の組合利用を、正組合員の2分の1とする。これは、農協の意向を忖度せざるをえない自民党によって、完全に骨抜きされた。全中は新たな制度に移行するが、「農協系統組織での検討を踏まえ」る。全農の株式会社化も、「独占禁止法が適用される場合の問題点を精査して問題がなければ」株式会社化を促すとされた。改革するかどうか、判断するのは、農協となった。全中は勝利宣言した。

 2014年11月、全中が公表した自己改革案では、地域農協に対する全中の監査権限は維持するとともに、全中などの中央会を農協法に措置することが重要だとした(全農やホクレンなどの株式会社化については、検討を先送りした)。

強制監査が争点に

 JA農協は、上意下達の“トップ・ダウン” の組織である。強制監査は、中央の連合会が地域の農協をコントロールする手段として機能した。

 ボトム・アップ組織の生協には、全国連合会による強制監査などない。また、農協は、株式会社の場合の公認会計士又は監査法人による外部監査は、投資家保護のためである。組合員を抱える農協では十分ではないというが、

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