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「VAIO Phone」に欠けるVAIOらしさ

ノートPC「VAIO Z」では高評価を獲得、スマホでは焦りも

大河原克行 フリーランスジャーナリスト(IT産業)

 VAIO株式会社と日本通信株式会社が「VAIO Phone」を発売した。

 VAIOブランド初のスマートフォンとして、発売前から話題を集め、1月30日に日本通信が開いた2014年度第3四半期決算発表の席上では、VAIO Phoneの外箱を公開。それが記事になっただけでも、ソーシャルメディアでは盛り上がりをみせるなど、異常ともいえる反応が出ていた。

 それだけに、3月12日に行われた製品発表は、大きな注目を集めたなかで迎えたが、その内容は残念ながら期待はずれだったといえる。

期待したほどの差別化感がない

 会見では、日本通信の三田聖二社長は、「アップルに対抗しうる唯一のブランドがVAIO。今回の製品は、格安スマホではなく、プレミアムスマホといえる製品だ」と、付加価値の高さを強調してみせた。

 だが、多くの人がVAIOブランドに期待を抱いたほどの差別化感はない。むしろ、ソニー時代後期に投入し、VAIOの減速を招いた標準的な仕様を搭載した製品に近いイメージが漂うものになったといえる。

 今回発表した製品は、製品企画から市場投入まで、わずか半年という短期間で行ったものだ。本来ならば、昨年12月にも発表する予定だったが、世界第2位のタッチパネルメーカーが会社更正法を適用したため、設計変更を余儀なくされ、発売がずれ込んだ経緯がある。もっと早いタイミングでの市場投入も予定されていたともいえる製品だ。

 そうした短期間での製品化であることからもわかるように、この製品は、VAIOが1から設計したものではなく、台湾のODMメーカーに設計、開発を委託したことによって実現したものだ。確かに、そうでもしなれれば、スマホの開発実績を持たないVAIOが、これほど短期間に製品を投入できるはずがない。

VAIOの最大の特徴が生かされていない

VAIOの関取高行社長(右)と日本通信の三田聖二社長

 発表では、日本通信が製造を担当し、VAIOがデザイン面での協力を行ったことを説明。VAIOの関取高行社長は、VAIOのコアは、「高密度実装技術」、「放熱設計技術」、「コア技術により鍛えられたデザイン力」の3点にあるとしながらも、「今回のVAIO Phoneは、そのなかでもデザイン力を活用した製品になる」と語る。つまり、「高密度実装技術」、「放熱設計技術」というVAIOの最大の特徴が、今回の製品には生かされていない。

 デザインとしては、ビジネス用途にもフィットする黒基調のシンプルな造形、表面と裏目のガラス素材を生かした光沢とマット仕上げの側面でコントラストを表現、握りやすさを重視したソフトタッチ塗装の3点をあげる。つまり、この部分にだけ、VAIOの「コア」を盛り込んだというわけだ。

 実際、製品発表後、これをみたユーザーの間からは、パナソニックが台湾で販売しているAndroid搭載スマホ「ELUGA U2」と筐体が同じではないか、といった声があがり、話題を集めた。VAIOでは独自のデザインを施したものとしているが、やはり外観形状が酷似している点は否めない。ODMメーカーを活用した生産では、こうしたことが起こりがちだ。

「VAIO Z」は尖り方に高い評価

 多くのユーザーがVAIO Phoneに期待していたのは、VAIOならではの尖った製品であったといえよう。実際、VAIO Phoneに先んじて、2月16日に発表したノートPCの「VAIO Z」は、その尖り方が高い評価を得ている。

 VAIO独自の「高密度実装技術」、「放熱設計技術」によって実現されるZ Engineは、高性能を実現する一方で、軽量化、薄型化、長時間のバッテリー駆動など、

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