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AIIB、決断を迫られる日本

自主性を発揮できず右往左往、従来の惰性を脱し切れるか

齋藤進 三極経済研究所代表取締役

 現実が変われば、それを仕切る制度も、遅かれ早かれ変わらざるを得ない。現実に不適合な古い制度を維持しようとしても、どこかに無理が来る。あるいは、現実不適合を起している制度の上に胡坐(あぐら)をかいて、米国や日本が、世界経済の国別・地域別バランスが大きく変わったにも関わらず、従来と同じ様に主導権を保持しようとしても、関係者から愛想を尽かされるのが落ちだ。

 中国が提唱したアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参画騒動は、その典型のようなドタバタ劇であったと言える。米国は、英国、ドイツ、フランス、イタリアなどの欧州諸国からは愛想を尽かされ、自主性を発揮できない日本は、右往左往したというのが実状だろう。

 世界経済のGDP(購買力平価)の国・地域別シェアと、輸出額の国・地域別のシェアを円グラフにして眺めると、最近の世界の経済バランスが、一目瞭然となる。

 米国は、世界貿易に占める輸出額のシェアにおいては、主要国ではあるが、主導国ではない。GDPについても同様である。中国のGDPの規模は、昨年秋の国際通貨基金の推計・予測では、2014年には米国を凌駕し、それから数年以内に欧州連合をも凌駕するとしている。輸出額の規模では、単独国としては文句なく首位である。

 良くも悪くも、中国が、自国の経済規模でも、国際貿易の規模でも、世界最大で、米国に並ぶ大国になっている。その現実を素直に前提としなければ、現実的な世界経済・国際経済論は成り立たない。しかし、米国も中国も「大国」ではあるが、自国の意思を他国に強制できる「覇権国」ではないことに留意しなければならない。

 確かに、第二次世界大戦直後の1946年に、米国が主導して創設された国際通貨基金(IMF)を中核とした国際通貨制度や、世界銀行(国際復興開発銀行、1960年に創設された国際開発協会を加えて、世界銀行グループ)や、日本が米国と並んで主要提唱者となって、1966年に設立されたアジア開発銀行は、欧州経済復興、日本、アジア、世界の新興経済の発展のために多大な貢献をして来た。

 世界銀行の資金が、日本の戦後復興のための社会インフラとして電力、製鉄、東海道新幹線、首都高速道路、東名・名神高速道路などの建設資金の一部として貸し付けられたのは有名な話である。アジア開発銀行でも、最近の融資残高の半分近くは、中国、インド向けである。

 しかし、世界銀行グループやアジア開発銀行の資産規模では、アジア新興国の社会インフラ投資のための長期資金の膨大な需要を賄うには、余りにも小さい。

 そこで、両行の大幅増資に踏み切るなどの「改革」に乗り出せば良いのだが、

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