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TPP日米コメ交渉は国益につながらない

コメの関税維持のため、関税ゼロの輸入枠を設定すれば消費者負担が増加

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

 米国にフロマン通商代表が4月19日に来日し、同日と21日に甘利TPP担当大臣と詰めの交渉を行っている。

内閣府でフロマン米通商代表部(USTR)代表(左)を迎える甘利明TPP相=2015年4月19日、代表撮影

 直前の実務者レベルの協議から始まり、今回のフロマン訪日による閣僚級協議、28日の安倍総理訪米という一連の流れを考えると、相当前から、両国当事者間で、一定の“落とし所"に至るまでのシナリオが描かれていたような感じがする。

 交渉者がこのようなシナリオを描いて実行することは、度々行われることであって、それ自体、批判するようなことではない。問題は、その内容が日本にとって良いものであるかということである。

 コメの関税を維持する代わりに、関税ゼロの輸入枠を設定することによって、日米間の交渉が妥結するだろうということは、私がTPP交渉に日本が参加する以前から予想していたことである。理由は簡単である。

 「聖域の中の聖域であるコメについては、関税を維持しなければならない。しかし、米国のコメ業界の対日輸出を増やさなければならないという実利にも対応しなければならない。そうすると、TPP交渉で例外を主張する以上、TPP参加国に対する関税ゼロの輸入枠、TPP枠を設定するしかない」(「コメは安楽死するしかない!? 外れてほしかったTPP交渉予想」WEBRONZA 2013年11月25日)

 これまでのコメ交渉は、このような事態の繰り返しだった。

 まず、ガット・ウルグァイ・ラウンド交渉では、輸入数量制限等の非関税障壁を関税化すれば消費量の5%の関税ゼロの輸入枠(ミニマム・アクセス)を設定するだけで済んだのに、コメについて関税化の特例(例外)措置を獲得するために、この輸入枠を消費量の8%まで拡大するという代償を払った。

 それが過重だと分かったので、1999年に関税化に移行し、消費量の7.2%(77万トン)に抑えることとした。関税化に移行した後のWTO・ドーハ・ラウンド交渉では、コメの関税の引き下げ幅を一般原則に比べて低く抑えるため、ミニマム・アクセスを加重・拡大するという交渉方針をとった。

 しかし、関税ゼロの輸入枠を設定・拡大すれば、国内生産はその分減少することになる。このため、輸入しても、そのコメをエサ用や援助用に仕向けるなどの方法によって、国内生産に影響を及ぼさないようにしてきた。ただ同然で処分するので、

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