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ドイツはEUの支配者か、嫌われ者か

やはり消せない大戦の過去

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

会見するメルケル首相
 EUでギリシャ問題が一服したと思ったら、今度はドイツ問題が浮上してきた。2度にわたる世界大戦の加害者でありながら、EU経済圏の支配者になったドイツ。かつて敗戦国として賠償金支払いの減額を嘆願したドイツが、いま立場をかえて債務返済に苦しむギリシャを責め立てる。「冷徹な規律」「容赦ない態度」、EU諸国のドイツを見る目が険しくなってきた。

 フランスの歴史人口学者エマニュエル・トッド氏の近著「『ドイツ帝国』が世界を滅ぼす」が話題になっている。その中でトッド氏は、ドイツが経済で成功したからくりをこう説明する。

「EUの恩恵を独り占めしてきたドイツ」

 「ドイツは欧州中央銀行(ECB)の本部をフランクフルトに誘致して金融を握った。ユーロ安で輸出を伸ばし、低賃金の東欧圏を生産基地にし、軍事費はNATOにお任せ。つまりEUの恩恵を独り占めしてきた」(右下のグラフ参照)。

 仮にドイツがいま旧通貨であるマルクのままでいたら、その強い経済力ゆえにマルク高になり、輸出は今よりかなり低調なはずだ。しかし実際には、ユーロに加盟するポルトガル、ギリシャ、東欧諸国など弱体国のおかげでユーロは安く、ドイツ経済に味方した。

 2008年の金融危機後もドイツの銀行経営は健全で、国境を接するオランダ、ベルギー、スイス、オーストリアや東欧諸国を経済圏に取り込み、最近はウクライナにも接近する。これが「ドイツ帝国」のビジネスモデルで、トッド氏に言わせれば、フランスすらドイツに服従しており、「オランド大統領はドイツ副首相」なのだという。

ギリシャにかなり侮蔑的な言葉と「ドイツ問題」

 ギリシャのEU残留は7月12日、ブリュッセルでの最終交渉で決まった。その後の報道によって会議の様子が

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