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世界同時株安は自然な市場調整

金融政策偏重から財政の活用も含めた経済政策への転換を

齋藤進 三極経済研究所代表取締役

 医療の世界には、万能薬はない。特定の症状に良く効く医薬は、副作用も非常に強い場合が多いものである。

 同様に、経済、経済政策の世界にも、万能の方策、政策はない。特定の経済状況に良く効く方策、政策は、副作用も強い。

 米国連邦制度が、リーマンショック後に打ち出した量的緩和政策も、例外ではない。

 リーマンショック後の金融資本市場の大混乱に対応しようと、米国の中央銀行は、2008年12月には、政策金利(フェデラル・ファンド・レートの誘導目標水準)を0・00%~0・25%にまで引き下げた。

 しかし、金融資本市場の安定化には、それだけでは足りず、米国金融政策当局は、米国の国債、不動産担保証券などを買い上げるという量的緩和政策に打って出たのだった。

 その結果、米国連邦制度の総資産の規模は、リーマンショック前の9千億ドル余りから、4兆5千億ドル前後まで、3兆6千億ドル前後もの膨張を見た。

 当時のバーナンキ米国連邦準備制度理事会議長が量的緩和政策を打ち出した狙いは、先ず、金融システムに十分な流動性(資金)を供給し、金融機関の資金不足による行き倒れ倒産を未然に防止してパニックを鎮静化し、金融システムの安定化を図ることにあったと見られる。

 次の段階は、米国の国債、不動産担保証券などを買い上げることを通じて、長期金利の水準を引き下げ、投資資金が、株式、不動産などの危険資産への投資に向かうように仕向け、リーマンショックで大暴落していた資産価格の反転・上昇、回復を図るというものであった。

 その狙いは、資産価格の上昇による「資産効果」で、豊かになったと感じた個人は消費支出を増やし、企業は設備投資を増やして、米国経済の景気回復に資するというものであった。

 量的緩和政策で、米国連邦準備制度の総資産が約4倍に、

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