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牛肉の輸入制限は問題なのか?

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

新たな摩擦への懸念

 冷凍牛肉の輸入が対前年同期比で117%を超えたため、8月から来年の3月末まで、冷凍牛肉について緊急輸入制限(セーフガード)が発動され、現在の38.5%の関税が50%に引き上げられる。

 これによって、一部の外食業界からは関税の引き上げを商品価格に転嫁できないので収益が悪化するとか、輸出先のアメリカとの間で新たな摩擦が生じるという懸念が表明されている。

輸入制限とは何か?

 輸入制限(セーフガード)とは、外国からの輸入が急増したときに、影響を受ける国内産業を救済するためにとられる措置のことである。

 実は、セーフガードには、いろいろな種類のものがある。まず、工業製品も含め、最も代表的で一般的なものは、WTO(世界貿易機関)の前身のガットの時代から認められているものである。このセーフガードを発動しようとするときは、調査を行って、国内産業への重大な損害が生じていると認めることが必要である。また、発動後、一定の期間は再発動を禁止される。

 このように、発動のための条件は厳しいのだが、WTOでこれ以上は関税をとりませんと約束している以上の関税をとることができる。

 例えば、ある品目について50%以上はとらないとWTOで約束していても、80%に引き上げることが可能である。また、関税の引き上げだけでなく、これ以上の輸入量は認めないという数量を制限することも、認められている。

 もちろん、輸出国は不利益を受けるわけなので、輸入国は何らかの補償(例えば別の品目の関税引き下げ)を輸出国に提供しなければならない。それができなければ、輸出国は、これに対抗して、別の品目の関税を引き上げるなどの措置を講じることができる。

ウルグアイ・ラウンド交渉で認められた農業のセーフガード

 農産物については、特別なセーフガードがある。

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