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高度成長を続けるインド

榊原英資 (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト

 インドがこのところ年7%前後の成長を続けている。1979~2008年の30年間のインドの年平均成長率は5.8%でかなり高かったが、中国の9.8%には遠く及ばず、成長率はシンガポール(7.0%)、韓国(6.3%)、台湾(6.3%)より低かったのだ(この期間、年平均成長率のトップ10はすべてアジア諸国、ナンバー10のインドといえでもアメリカの2.9%、日本の2.4%を大きく上回っていた)。

首脳会談に臨む(左から)安倍晋三首相、トランプ米大統領、インドのモディ首相=2018年11月30日、ブエノスアイレス

 アジアの多くの国々は1913~1950年には欧米に植民地化され、低い成長率にあえいでいた。しかし、第2次世界大戦後、アジアの国々は次々と独立し(1945年ベトナム、46年フィリピン、47年インド及びパキスタン、48年ビルマ〈現ミャンマー〉、49年インドネシア、57年マラヤ連邦〈後のマレーシア〉)、高い成長率を達成していったのだった。まず、高成長を達成したのは日本(1956~73年の年平均成長率は9.1%)。これに韓国・香港・台湾・シンガポールが続き、1980年代にはシンガポール以外のASEAN諸国、そして90年代に入ると中国やインドが高い成長率を記録していった。前述したように1979~2008年、30年間の世界の成長率のトップ10はすべてアジア諸国だったのだ。

 この30年間最も高い成長率を達成したのは中国で、前述したようにほぼ10%の年平均成長率を記録した。しかし、2010年代に入ると成長率は緩やかに低下し、高度成長期から安定成長期に移行してきている(2011~2017年の年平均成長率は7.57%、2018年の予測〈IMFによる2018年10月の推計〉は6.60%)。

 逆に、インドは2000年代から成長率を高めてきており、2011~17年の年平均成長率は6.84%と1979~2008年の年平均成長率5.8%を大きく上回ってきている。中国が高度成長期から安定成長期に移行し、その成長率を10%前後から7%台、そして6%台へと下げてきているのに対し、インドは逆にかつての6%弱の成長率を7%前後にまで高めてきているのだ。インドの成長率は2014年には中国のそれを抜き(2014年の成長率はインドが7.41%、中国は7.30%)、その後も2017年(インド6.68%、中国6.86%)を除いて中国を上回っている。2018年はIMFの予測(2018年10月推計)によると、インド7.30%、中国6.60%となっている。

生産年齢人口が大きく増加

 2017年の中国の人口は13.90億人、インドのそれは13.17億人と、人口でもインドは中国に迫ってきている。国連の予測によると、2024年までにはインドの人口が中国のそれを追い抜き、2030年にはインドの人口は15.27億人と中国(14.15億人)を1億人超上回り、2050年には17.05億人と中国(13.48億人)を3億人超上回るという。中国の人口は2030年をピークに減少に転じ、老齢化が進んでいくのだが、インドは人口増加が続き、しかもインドの人口構成は若く、25才以下が2017年の時点で50%以上を占めている。今後しばらくの間は生産年齢人口が大きく増加していくことが見込まれるということなのだ。

 こうした人口の増加もあり、インドは今後も高成長を続けると予測されている。

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