メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

アジア留学生獲得、日本は中国に「自由」で対抗を

理工系留学生を取り合う日中。日本の大学は学問・言論の自由をもっと発信すべきだ

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

 日本に来るアジアの留学生が増えている。国別では、断トツの中国人留学生が頭打ちになる一方、ベトナム人留学生の伸びが目立つ。多くの大学がベトナムとの関係を深め、日本に送り込むルートを確立したことが奏功した。18歳人口が減る大学にとって、留学生は経営の命綱である。

アジア各国も高齢化。若者は取り合いになる

 「このブームはいつまで続くのか」と懸念する大学関係者は多い。中国はすでにアジア最大の受け入れ国として台頭し、特に「一帯一路」の国々の留学生を増やしている。いずれ日本の大学に影響が及ぶのは避けられない。

 アジアの国々では出生率が低下している。15~29歳の若者は、先進国を含むどの国にとっても貴重な存在だ。これから世界中で取り合いになり、日本だけに大量に来てくれるとは考えづらい。恐らく10年以内に留学生は減少に転じ、依存する大学は経営難に直面する懸念がある。

 日本は2008年から「留学生30万人計画」を推進してきた。日本学生支援機構によると、留学生総数は2017年12月時点で26万7000人。このうち日本語学校を除いた高等教育機関(大学・大学院・専修学校)の留学生は18万8400人(グラフ参照)で、2014年ごろから増えてきた。

 その内訳は、1位が中国で7万9500人(全体の42.2%)、2位がベトナム3万5500人(同18.8%)で、あとはネパール1万4900人、韓国1万3500人など。目立つのは中国の比率が前年より1.8ポイント減り、ベトナムが逆に1.9ポイント増えたことだ。

ベトナム人留学生が増えた理由

 なぜ、ベトナム人留学生が増えたのか。

 各大学が個別にベトナムとの関係を深めてきたことが大きいが、何よりベトナムは経済成長の最中にあり、進出している日本企業に就職を希望する若者が多い。反中感情もあって、中国より日本への留学ブームが起きているのだ。

 例えば、豊橋技術科学大学は2016年にベトナム国立土木大学などと交流協定を結んで25人の留学生を受け入れた。同じように金沢大学は66人、長岡技術科学大学は106人、立命館アジア太平洋大学は406人を受け入れた。

長岡技術科学大学で研究室を見学するベトナム人学生たち=同大学のHPより

 初めの2年~2年半は現地の大学で専門学科と日本語を学び、後の2年間を日本の大学で授業を受ける。大学は、学生募集のために現地事務所を開き、専門職員を雇ってリクルートに力を入れている。

 大半の留学生は卒業後、在留資格を切り替えて日本企業に就職するか、母国に戻って日系企業に就職する道を選ぶ。人材不足の企業、特に中小企業にとってはありがたい話だ。

 日本の18歳人口、すなわち大学に入学する若者の数は、2018年以降、減少期に入った。1992年は205万人だったが、2017年は120万人になり、29年には106万3000人に半減する。

 人口減少に対応できない大学は、収支が悪化して存立が難しくなる。その苦しい懐事情が、大学を新たな収益源である留学生獲得に走らせているのだ。

中国への留学ベスト3は韓国、タイ、パキスタン

 一方の中国は、「2020年50万人」という「留学中国計画」に沿って、想定以上の速さで留学生を増やしている。教育部(省)の資料では、2017年の外国人留学生総数は49万人に達し、すでに日本の1.8倍だ。

 国別では、1位韓国、2位タイ、3位パキスタン。下位にはインドネシア、カザフスタン、ラオスも入り、「一帯一路」の国々の出身者が全体の65%を占める。将来の親中派の人材を今から抜かりなく育てている。

 例えば、理工系が強い清華大学には約3500人の留学生がいる。AIやビッグデータ分野では、同大学を含む中国勢が米国と先頭争いをしている。日本もこの分野に力を入れており、日中が理工系留学生の獲得を競い合う形になっている。

大学の学問・言論の自由、開放性をもっと世界に発信を

 では、日本が留学生にとって魅力ある国であり続けるためには、何をアピールすればいいのだろうか。

・・・ログインして読む
(残り:約792文字/本文:約2541文字)