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インドの成長を当て込む「2020年景気回復」

榊原英資 (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト

世界経済が減速した2019年

 IMFは2019年10月15日の「世界経済見通し」で2019年は世界経済は同時減速するものの、2020年は景気が回復すると予測している。

 2019年の成長率3.0%はリーマン・ショックが起きた2008年(3.0%)、及び翌2009年(マイナス0.1%)以来の低水準。先進国経済は軒並み成長率を落とし、アメリカは前年の2.9%から2.4%へ、ユーロ圏は1.9%から1.2%へ成長率を下げることになる。

 1980年から2010年にかけて年平均10%弱の成長率を達成していきた中国も2012年には7%台(7.90%)、2015年には6%台(6.90%)に成長率を落とし、2019年には6.14%、2020年には5.80%まで成長率を低下させると予測されている(2019年、2020年の予測は前述のIMFの「世界経済見通し」によるもの)。

 中国は人口減少・老齢化の局面に入りつつあり、2050年にはその成長率は3%前後まで低下すると予測されているのだ。それでも3%は欧米先進国や日本より高い成長率ではある。

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中国を追い抜くインド

 ロンドンに本拠を置くコンサルティングファーム、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)の予測によると、2050年の時点でのGDPナンバー1は中国(PPPベースで58.499兆米ドル)、ナンバー2はインド(44.128兆米ドル)とされている。

 2018年時点でのGDPナンバー1はアメリカ(20.580兆USドル)、ナンバー2は中国(13.368兆USドル)で、インドは7位の2.718兆ドルに過ぎないが、今後急速にGDPを上昇させ、2040年前後にはアメリカを抜き、2050年にはナンバー2になると予測されているのだ。

 PwC予測によると、2016~2050年の年平均成長率のトップはベトナムの5.0%、ナンバー2はインドの4.9%とされているのだ。ちなみにインドに続くのは、バングラデシュ、パキスタン。フィリピン等で、2016~2050年はまさに「アジアの時代」だということができるのだろう。

 中国が人口減少局面に入るのと反して、インドは今後人口が急速に増加し、2025年前後には中国を抜き、2030年には15.1億人、2050年には16.6億人まで増加するとされている(国連推計)。ちなみに、中国の人口は2050年には13.7億人まで減少するとされている(2018年には14.0億人)。インドは30歳未満の人口が多く、全体の60%近くを占めている。今後、生産年齢人口(15才~64才)比率の増加が見込まれ、2040年頃まで人口ボーナスが続き、それが中長期的な経済成長率を高めていくのだ。

 経済成長率を次第に下げている中国に対し、インドは成長率を高めており、2015年には中国を抜き、(インド8.0%、中国6.9%)、その後もリードを維持している(2018年にはインド6.81%、中国6.57%)。前述したように、今後もインドの高度成長は続き、しばらくの間は6~8%の成長率を達成していくと思われるのだ。

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 インドと日本は第二次世界大戦中から良好な政治・経済関係を維持し続けてきている。

 第二次世界大戦で欧米と戦った日本は、当時、イギリスの植民地だったインド独立を支援し、チャンドラ・ボース等のインド独立の旗主達は日本等に亡命し、そこから独立運動を行っていたのだ。日本がイギリスと戦ったインバール作戦でも、チャドラ・ボースはインド義勇軍のリーダーとして参加している。

 現在でも、インドと日本は首相の年一度の相互訪問が制度化されており、中国や韓国等とは違って、極めて良好な外交関係を長期にわたって維持しているのだ。昨年も12月15~17日には安倍晋三首相がインド訪問している。今年(2020年)はインドのナレンドラ・モディ首相が日本を訪問することになる。首相や大統領の他国訪問はしばしばあるのだが、相互の年一度の訪問が制度化されているのは日本とインドだけなのだ。

インドに続くインドネシア

 アジアの中国・インドに次ぐ大国インドネシア。人口は2.64億人と日本の2倍強。中国(13.95億人)、インド(13.34億人)、アメリカ(3.27億人)に次ぐ人口大国だ。

 前述したPwCの予測でもインドネシアは2050年、中国・インド・アメリカに次ぐGDPを有してくると予測されている。そして、アジア全体で世界のGDPの50%を超えていくとされているのだ。

 まさに、世界経済の中心がアジアに戻ってくる「リオリエント」現象が次第に現実になってくるということなのだ。

2020年、インドに期待が集まるが…

 さて、2020年の世界経済、日本経済だが、はたして、IMFの予測通り景気回復を果すのかどうか。

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