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「高リスク国」日本から、太平洋の「楽園」ツバルへ、私はこうして戻った

「ウイルスから国民を守れ!」ツバルの危機対応

河尻京子 NPO法人ツバル・オーバービュー理事

 ツバル政府は新型コロナウイルス対策で日本からの渡航者に入国制限をかけた。昨年末に日本へ一時帰国していた私がそれを知ったのは、ツバルへ出発する前日の2月3日午後だった。コフェ外務大臣が自身のSNSに入国制限の書類を投稿したのを偶然見つけたのであった。

え? ツバルに入国できない?

 入国制限は以下のような内容だった。 

(1)ツバル上陸前30日以内に中国への渡航歴を有する渡航者すべて入国禁止
(2)フナフティ空港及び海港における強制的な健康スクリーニングの実施
(3)高リスク国への渡航歴を有する渡航者は、ツバル上陸3日前に新型コロナウイルスに感染していないことを証明する書類を取得するとともに、ツバル上陸前少なくとも5日以上,高リスク国以外の国に滞在しなければならない。なお、上記「ツバル上陸3日前」及び「ツバル上陸前少なくとも5日以上」とは、ツバル上陸日を含まない
(4)ナウソリ空港(フィジー)及びタラワ空港(キリバス)でも健康スクリーニングを実施する可能性がある
(5)過去30日以内に中国又は高リスク国への滞在歴がある外国船の船員はすべて入国禁止
(在フィジー日本大使館訳を転載)

 私は(3)に該当するかもしれない。

 「高リスク国」がどこかは書かれていなかったが、すでに感染者が出ている国であることは想像できた。それが香港、日本、シンガポール、タイであることを確認したのは、午後11時過ぎになってからだった。

 数日前に隣国のキリバスが同じような入国制限をしていたから、いずれはツバルも、と思っていた。こうなってしまった以上、状況を受け入れるしかない。

 入国制限の条件を満たすために、航空チケットの変更や必要な宿泊の手配を始めた。

 まず、「高リスク国」以外の国に5日以上滞在する必要がある。

 普段は、成田からフィジー行きの直行便に乗り、そこで数日宿泊してからツバルへ行く。私のチケットは、フィジーでの宿泊は1泊だけの最短の日程だった。それを、「高リスク国」ではないフィジーで5日以上の滞在に変更すればいい。ホテルの手配を済ませ、フィジーからツバルへ行く便の日程変更もメールで依頼した。

 次に、ツバル上陸3日前に新型コロナウイルスに感染していないことを証明する書類を取得しなければならない。キリバスの入国制限を聞いていたので、すでに日本で健康診断書をもらっていた。念のため、フィジーでも健康診断書を手に入れる方法を調べた。

 日本政府も、当初は水際対策で新型コロナウイルスの侵入防止を試みたが、入国制限はしなかった。しかし、ツバルのような医療環境が整っていない国は、いったん感染者が出ると、より深刻な事態となってしまうので入国制限に踏み切った。

 ツバルはほかの国からは遠く離れている島国で、外から人が入ってくるルートは限られている。飛行機は週3便フィジーから、そして週1便キリバスから飛んでいるのみだ。ここを制限すれば、ウイルスが国内に入るのを食い止めることができる。

フィジー とツバルを結ぶフィジー 航空の飛行機。週に3便飛んでいる

国にある病院はたったひとつ

 ツバルには病院が一つしかない。

 プリンセス・マーガレット病院と呼ばれ、首都のあるフナフティ環礁にある。2003年に日本の海外開発援助(ODA)で造られた建物を今も使っている。

 医療は無料で、毎日たくさんの患者がやってくる。内科が基本だが、簡単な外科手術もできる。産婦人科もあり、多くのお母さんはここで赤ちゃんを産む。

ツバルに一つだけあるプリンセス・マーガレット病院。日本のODAで造られた

 現在は、主に台湾当局がこの病院で医療支援を行っている。医師の出身地はツバル、パプアニューギニア、台湾、オーストラリアと様々だ。以前はフィリピン、インド、キューバからの医師もいたようだ。看護師はツバル、フィジー出身だ。

 フナフティ以外の離島には、看護師が常駐するクリニックがあるだけなので、医者に診てもらう必要があると判断された人は、定期船でフナフティ行き、親戚宅に泊まりながら、プリンセス・マーガレット病院で診てもらう。1年に数回、オーストラリアや台湾など海外から医療チームが来る。その時々で、耳鼻科だったり、眼科だったりと専門が違うので、ラジオでどの専門の医療団が来るか聞いて予定を合わせる。ここで対応できないような大きな手術や処置が必要になると、フィジー、インド、ニュージーランドなどの病院へ送られる。

 私もこの病院には何度かお世話になった。最近では昨年6月、デング熱にかかった時だ。

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