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コロナ対策で突出する「和牛」への大盤振る舞い

多くの国民が困っているのに、なぜ和牛農家だけ破格の支援がなされるのか?

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

 多くの国民が困っているのに、なぜ和牛農家だけ支援されるのか。

 4月11日NHKは、新型コロナウイルスの感染拡大で和牛の需要が減少し、国産牛肉の在庫が6割増加しているため、農林水産省は和牛の販売促進に500億円を投じるとともに、学校給食で和牛を使う際の補助金交付、農家が出荷する牛1頭当たり2万円の支給を行うと報じた。

 和牛の販売促進策としては、具体的には、和牛を卸売業者が小売業者などに販売した場合に1キロ当たり1000円の奨励金を交付するほか、在庫を保管するための追加的な経費についても補助することにしていて、スーパーでのセールなどを通じて消費の回復につなげたい考えだという。

 私は、これまで『「和牛商品券」という愚策が提案されてしまった理由』および『学校給食で余剰農産物を処理するな!~「高級和牛を給食に」が映し出すもの』の二回にわたり、自民党や国会で検討されている和牛対策の問題点を指摘するとともに、『あなたの知らない農村~養豚農家は所得2千万円!』や『農家はもはや弱者ではない』などで、畜産農家の所得水準が極めて高いことや、畜産農家を保護・支援する理由は、食料安全保障、環境保護、国民の健康維持のいずれの観点からも、存在しないことを指摘してきた。

Kelly Marken/Shutterstock.com

支離滅裂な対策内容

 ここでは、対策を講じる正当性はさておき、まずは今回報じられた対策の内容について検討したい。結論から言うと、仮に和牛の需要回復や在庫解消という目的が正しいとしても、この対策内容は支離滅裂である。

 もし私が農林水産省の担当者で部下がこのような案を持ってきたら、突き返していただろう。

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