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お茶碗1杯14円!? 安すぎるお米の将来を考える

秋の新米を毎年楽しむために必要なこと

柏木智帆 お米ライター、元神奈川新聞記者

 円安やコスト高を背景に、次々と値上げに踏み切る商品が出ている。小売物価統計調査で今年8月の主食の価格を昨年同月と見比べると、食パン14.3%高、ゆでうどん16.3%高、スパゲティ23.9%高、カップ麺10.4%高と、小麦製品はいずれも価格が上昇。一方で、コシヒカリは1.8%安、コシヒカリ以外のお米は5.2%安と、お米だけが値下がりしている。

食パンをはじめとする小麦製品に比べ、お米の値段だけが下がっている=「小売物価統計調査」から編集部作成
小売物価統計調査 / 小売物価統計調査(動向編)

 食料品の中には価格据え置きで内容量を減らす“実質値上げ”商品もあるが、お米の中にはこれに逆行して内容量を増やした商品もある。

お米は増量販売で実質値下げ

 近所のスーパーのお米売り場には「10kg+500g増量」や「5kg+300g(2合)増量」などと表記されたお米が並び、ネット上にも「5kg+350g増量」や「10kg+700g増量」といった“実質値下げ”のお米が各卸売会社から販売されている。

店頭のお米の袋には「増量」がうたわれていた

 大手米卸会社「木徳神糧」(東京都千代田区)では、2021年産米の増量企画を産地品種銘柄限定で収穫直後の昨年10月から開始した。同社によると、「家庭消費の落ち込み」と「産地の豊作」が理由だ。同社社長室の中西泰晴さんは「買う量が増えると、次にお米を買うタイミングが遅れることも考えられますが、増量の効果はゼロではない。多くある分いつもよりも米を炊く回数を増やそうという人もいないわけではないと思います」と話す。

 米卸などを手がける「むらせ」でも今年の年明けから2021年産米の増量販売を開始した。その理由について同社商品部は「米相場が過去最低水準になっている中で売価を維持するため」と説明する。分かりやすく言うと、本来ならば売価で200円下げるところを100円下げて増量したということだ。ただ、各社がお米の増量を行う中、「増量商品だらけで増量が当たり前のようになってきたので、そろそろ“お買い得感”の効果はなくなってきたかな……」(同社商品部)とも感じているという。

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