メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

リニア中央新幹線にくすぶるリスク

「俺は乗らない」とJRトップに言わせた超電導の技術的困難とは

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

 超電導リニアで東京と大阪を結ぶ中央新幹線の発案者であり、30年間推進してきたJR東海名誉会長の葛西敬之氏が今年5月死去した。同氏と深い師弟関係にあった安倍元首相も7月鬼籍に入った。両氏の死は、リニアをめぐる「政治の時代」が終わったことを感じさせる。これを機に、現実を踏まえて筆者なりに超電導リニアを検証してみたい。

報道陣に公開されたリニア中央新幹線の最新の試験車=2021年10月8日午後1時53分、山梨県都留市、玉木祥子撮影報道陣に公開されたリニア中央新幹線の試験車=2021年10月、山梨県都留市

 計画の前提となる旅客数などの予測は、人口減少やテレワーク普及で実態からずれてきた。一方、超電導リニアのCO₂排出量は在来型新幹線の4倍もあり、政府の国際公約「2050年カーボンニュートラル」とは方向が逆。超電導技術そのものにも特有のリスクがある。

破格の財政投融資で半国家事業に

リニア新幹線地図

 上の地図は、JR東海のホームページに掲載された中央新幹線の計画図である。南海トラフ巨大地震が起きた際の最大震度が色付けされている。

 震度6強~7の地域を走る東海道新幹線には相当の被害が予想される。中央新幹線はそのバイパスになると宣伝されるが、こちらも震度5強~6強の山岳地帯が大部分なので、必ずしも万全ではない。

・・・ログインして読む
(残り:約2724文字/本文:約3184文字)